執筆者:弁護士 鈴木萌
ベトナムで事業展開する日系企業は、現地法人での日本人の雇用を希望することが多くあります。この場合、ベトナムにおける外国人労働者の雇用に関する規制を守る必要がありますが、この規制に関して先日法改正がありました。
まず、ベトナムで外国人労働者を雇用する場合、原則として次のステップを踏む必要があります。
①外国人労働者の雇用予定の確認兼報告
雇用者が、外国人労働者の雇用予定人数を確定して、管轄機関に報告する手続です。管轄機関は、条件を満たしていれば、文書で外国人労働者の雇用を承認します。
②労働許可証(ワークパーミット)の取得
上記の外国人労働者雇用承認書を取得した場合に限り、申請することができます。ワークパーミットを取得するには、政令が定める取得条件を満たす必要があります。
③在留許可(ビザ、レジデンスカード)の取得
ベトナムに入国して在留するための在留資格を得る手続です。
上記①②については、政令第152/2020/ND-CP 号に定めがあり、この政令を改正する政令として、2023 年9 月18 日に、政令第70/2023/ND-CP 号(以下「政令70 号」と言います。)が公布されました。
政令70 号による変更点は多数ありますが、最も大きな変更点として、ワークパーミットの取得条件の緩和があります。
前述の通り、ワークパーミットの取得には一定の条件がありますが、外国人労働者を雇用する場合、原則として、当該労働者が、「管理者・業務執行者」、「専門家」、「技術者」の3 カテゴリのどれかに該当することが求められます。このうち、「専門家」及び「技術者」に該当するための条件について、変更がありました。
「専門家」及び「技術者」に該当するための従前の条件は、次のとおりです。
専門家
a. ベトナムで就労しようとする業務・職位に適合する分野を専攻とする大卒以上(あるいは相当)の学位、及びその専門分野における3 年以上の勤務経歴を有する者
b.又は、ベトナムで就労する予定の職位に適合する5 年以上の勤務経験及び職業従事資格証明書を有する者
c. 又は、労働傷病兵社会問題省の提案に基づき政府首相が決定する特別な場合
技術者
a.技術又はその他の専門分野について最低1 年間以上の教育を受け、かつ、その専門分野において3 年以上の実務経験を有する者
b. 又は、ベトナムで就労予定の職位に適合する業務に従事した5 年以上の実務経験を有する者
従前は、原則として、「専門家」についてはベトナムで就労しようとする業務・職位に適合する分野を専攻とする大卒以上の学歴と、当該専門分野における職歴が、「技術者」については教育を受けた専門分野における職歴が、それぞれ必要とされ、学歴と職歴の分野的な連続性が求められていました。
しかし、特に日本では、教育課程での専攻が職歴や現職と結びついていない場合も多く、これが現地法人で日本人を雇用する場合にネックとなっていました。
今回の改正で、この条件が緩和され、「専門家」「技術者」どちらについても、教育課程での専攻分野と、職歴・就労予定業務との間の連続性の条件が廃止されました。
この点の改正は、ベトナムで日本人を雇用したい企業にとっては朗報と言えるでしょう。
なお、この部分の改正は、2023年9月18日に発効済みで、既に運用が始まっています。
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