コラム

COLUMN

国際取引~国際売買の注意点~

国際ビジネス

2021.07.15

1  はじめに

 博多港に散歩に行くと、たくさんのコンテナが港に置かれており、これから海外に輸出されるためにコンテナクレーンで船に運ばれる様子がわかります。今、日本円の円安が進み、海外から日本の物を買おう、という動きが高まっています。また今後どうなるかは不明ですが、日本円が高くなった場合には海外から安く物を買えることから、海外の物を買おう、という動きが強くなります。

 現在、議論されているTPPも、加盟国との間での貿易の障壁を取り払って、自由な貿易にしよう、という流れの一環であり、今後より日本企業と海外企業との間で輸出や輸入等が行われる流れが高まってくるものと考えられます。

 そのような中、取引当事者として気にしなければならないことは、取引の内容をどう定めるか、つまり国際売買についてどう条件設定をして自社に有利に、又は自社のリスクを回避できる方向で定めるか、という点にあると思います。そこで、今回は、国内売買とは異なり国際売買において注意しなければいけない点として、(たくさんあるのですが)、ひとまず、①インコタームズ、②関税、③知的財産、④三国間貿易を概観していきたいと思います。

2   インコタームズ

 まず、①インコタームズについてみてみましょう。これは、物流の運搬プロセスが国内の取引と異なることに起因したものです。例えば、輸出(海上取引)の場合、自社の商品を工場又は倉庫等から、港まで運び、港における通関を通して、コンテナに詰め、その物をコンテナクレーンで船に乗せ、船で海外の港まで運び、そこで荷下ろし、通関を通した上で、相手方企業の倉庫や店舗まで運ぶ、といったプロセスとなります(おおざっぱに言うと国をまたぐルートを通ります。)。そのプロセスにおいて、どこで引き渡しが終了するのか、どこまでの物流費用や諸税費用を輸出側が負担しどこからの同費用を輸入側が負担するのか、どこで危険が移転するのか(既存滅失の危険の負担を輸出側が負担するのか輸入側が負担するのか)、海上保険はどちらが付保する必要があるのか、等を決める必要があります。一般的にインコタームズ、と呼ばれているものは、これらの基準を類型化して定めたものであり、貿易業者では当たり前のように使われています。例えば、FOB博多、といえば「博多港における船上引き渡し」、CIF上海といえば「荷下ろし港は上海、契約価格には運賃保険料込み」というような意味合いで使われ、非常に便利な機能を持ちます。当然ながら、引渡場所、危険移転の地点が決まらないと、どこまでの費用をどちらが負担すればよいかわからず、ひいては具体的な費用負担が決まらず取引価格が決まらないため、貿易をする際には極めて重要な働きを持ちます。

3 関税

 次に、②関税について。関税とは、国内産業保護のためにかけられる税金であり基本的には輸入する商品に課税されるところ、この金額が高額化すれば当然その市場において売買する金額が高額化してしまうため競争力が失われる、という側面があります。例えば、外国企業が日本企業から食品や洗剤等の商品を輸入して外国側で販売しているところ、関税がありその他にも物流費用等を販売分に上乗せしないといけないため日本の市場価格の2倍、3倍の価格で売られているケースもあります。

 最近議論されているTPPやFTA等の議論は、この関税の撤廃又は規制緩和が行われているものでありますが、当然貿易コストを低額化できるかどうか、という点は契約の成立に大きな意味を持つと思います。関連諸国との間で関税が撤廃された場合には、海外へ売る商品の海外における競争力が高まることも考えられます。ただし、海外から日本へ輸入される物に関税がかからず日本国内の産業に悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。

4  知的財産

 三点目に、③知的財産があげられます。知的財産権のうち、特許、実用新案権、意匠権、商標権等の権利は、当該国家から付与されるものであって国単位で取得する必要があります。海外で商品を販売する場合には、当然ながら、その国でこれらの知的財産権を取得することも念頭に置いておかなければなりません。

5 三国間貿易

 最後に、④三国間貿易の存在です。例えば、アメリカの会社から日本の商社に対して商品の引き合いがあったとします。日本の商社としては、その商品はタイにおいて非常に低コストで生産が可能でありこれがまさにアメリカの会社の要望に合うと判断した場合、考えられる取引形態としては三国間貿易があげられます。例えば、三国間貿易でかつ(代理取引ではなく)仲介取引を選択した場合、契約については日本の商社がタイの会社から商品を購入する契約、アメリカの会社が日本の商社から同商品を購入する契約、の二本の契約が成立します。もっとも、実際の商品はタイからアメリカに一直線で移動するだけで日本を経由しません。この場合、日本企業のメリットとしては、アメリカの会社から受領する売買金額とタイの会社に支払う売買金額の差額を受け取れる点があげられます。もっとも、契約当事者となるため引き渡しができないリスクや代金回収リスク等、諸々のリスクが発生する点はデメリットといえるでしょう。

 以上のような、貿易特有の概念を少し知るだけでも、海外企業との取引のイメージがわきやすくなることでしょう。

(2016年1月執筆)

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