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コラム

COLUMN

amazon「協力金」要請問題にみる独占禁止法

コンプライアンス・内部統制

2021.07.08

執筆:弁護士 山腰 健一

1 はじめに

 公正取引委員会は、2018年3月15日、インターネット通販大手のアマゾンジャパン(以下、「アマゾン」といいます。)に対し、独占禁止法違反(優越的地位の濫用)容疑で立ち入り検査を実施しました。
 アマゾンは、出品者にネット販売の場を提供するサービスのほかに、メーカー等から商品を仕入れ、自らネットを通じて販売する事業を展開していますが、報道によれば、同社は、値引き販売した額の一部を「協力金」としてメーカー側に要求し、値引き販売による利益の減少分を補填させていた疑いがあるとされています。
 独占禁止法をめぐっては、2018 年2月にフリーランス人材の保護を目的とした指針が発表されるなど(別稿「フリーランスの活用と独占禁止法の適用について」参照)、近年話題性を増していますが、同じく最近の話題に上ったアマゾンの「協力金」要請問題を事例として、同法が禁止する「優越的地位の濫用」を本稿のトピックとして取り上げたいと思います。

2 優越的地位の濫用とは

⑴ 概要
 アマゾンが問題視された「優越的地位の濫用」とは、取引上優越した地位にある事業者が、その地位を利用して、取引の相手方に対し、正常な商慣習に照らして不当な不利益を与える行為を指します。
 本来、事業者がどのような条件で取引するかについては、当事者間の自主的な判断に委ねられるのが原則であり、自由な交渉の結果、いずれか一方の当事者の取引条件が他方に比べて不利となることは、あらゆる取引において当然に起こり得るものです。
 しかし、例えば、A 社にとってB 社との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、B社がA 社にとって著しく不利益な要請等を行っても、A社がこれを受け入れざるを得ないような場合(すなわち、B 社がA 社に対して「優越的な地位」にある場合)には、A 社にとって、B 社との交渉を自由かつ自主的な判断のもとに行うことは難しく、これによってB 社に不当に有利な条件が設定された場合には、公正な競争を阻害するおそれがあります。
 このような理由により、「優越的地位の濫用」は禁止されています。

⑵ 行為類型
 「優越的地位の濫用」に該当しうる行為類型としては、例えば次のようなものが挙げられます(公正取引委員会発行のガイドライン「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」)。 


① 購入・利用強制:例えば、購入しなければ取引を打ち切る、取引数量を削減するなど、今後の取引に影響すると受け取られるような要請をすることにより、取引の相手方に購入させること

② 協賛金等の負担の要請:例えば、取引の相手方の販売促進に直接寄与しない催事、売場の改装、広告等のための協賛金等を要請し、これを負担させること


 今回のアマゾンによる「協力金」の要求は、上記ガイドラインによれば、②の類型に当たる疑いがあるといえるでしょう。


⑶ 違反に対する措置
 公正取引委員会が立ち入り検査等の結果、「優越的地位の濫用」に当たると認定すれば、契約条件の変更等を求める排除措置命令の対象となり、違反事業者及び違反行為の内容が公表される可能性があります。また、違反行為の相手方との最長3 年間の取引額の1%に相当する課徴金の納付命令が出される場合があります。
 本稿執筆現在において、未だアマゾンに対する措置は出されていませんが、調査の結果、「優越的地位の濫用」行為が認定されれば、これらの措置が出される可能性は十分にあります。

3 最後に

 事業者様の中には、大企業や有力な取引先との間で、不当に不利な条件を要求された経験がおありの方もいらっしゃるのではないでしょうか。もしかすると、そのような取引先の行為は独占禁止法が禁止する行為に当たりうるかもしれません。そして、その旨を具体的に指摘すれば、コンプライアンス上、取引先もそのような条件の要求を取り下げてくれるかもしれません。お困りの場合は、一度ご相談いただければ幸いです。

(2018年8月執筆)

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  • 本原稿は、過去に執筆した時点での法律や判例に基づいておりますので、その後法令や判例が変更されたものがあります。記事内容の現時点での法的正確性は保証されておりませんのでご注意ください。

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