具体的にベトナム進出を検討したい人必見!どのエリアに進出する?
ベトナム進出の際、現地拠点をどこに置くかは、経営戦略上の重要な検討事項です。多くの日系企業は、通常、部材調達先、製品の販売先、労働者の採用といった様々な面からメリットとデメリットを検討し、北部もしくは南部を進出先として選択しています。ベトナム計画投資省のデータからも、海外からの投資先として、中部に比べて北部と南部への投資が多いことが分かります。中国との取引が多い企業は北部を、ASEAN諸国との取引が多い企業は南部を選択する傾向があります。 北部は首都ハノイに政府機関が集中しており、政府との交渉上利便性が高いと言えます。一方、南部はホーチミンを中心とした国内最大の経済区域であり、小売業・サービス業にとって魅力となっています。距離的には、ハノイ(北部)~ホーチミン(南部)間は約1,140km、航空機で移動時間は約2時間、陸路では約1,700kmで、鉄道での移動時間は約30~40時間となっています。 中部は北部・南部と比較すると、現状ではインフラ整備の面で劣っています。しかし、ビーチやホテル等を活かした観光産業や不動産開発の発展とASEAN諸国とタイ、インドを結ぶ物流拠点としての発展が見込まれています。 ※グラフのデータは『ベトナム計画投資省』参照 ベトナム北部の特徴 首都ハノイには、多くのベトナムおよび各国の政府機関、国際機関が置かれています。そのような公的機関との交渉が多い大企業は、北部に多く進出しています。 北部を選択するメリットとしては、経済面では、南部より若干割安で労働力が確保できること、部材の調達が比較的容易であること、今後の発展の余地が大きいこと等が挙げられます。政治面では、政府当局から情報を入手しやすく、交渉面での利便性が広く認識されています。 一方、デメリットとしては、電力が不足しやすいこと、通信インフラや道路の舗装状態も不十分である等、インフラの未整備な状況が挙げられますが、ODA事業によって、改善されていくと予想されます。現在のところでは、南部と比較すると裾野産業の集積は遅れています。 ベトナム北部へ進出した主な日系企業 大手メーカーに追従した部品メーカーが多く進出しています。 産業 日系企業 自動車 トヨタ、日野、ダイハツ、ホンダ 金属、自動車部品等 ブリヂストン、三井金属鉱業、共栄製鋼 二輪車 ホンダ、ヤマハ 家電 パナソニック 事務機 キャノン、ブラザー、京セラ、富士ゼロックス 電子電機機器 デンソー、豊田合成 小売業 イオン 食品 味の素 医療品 ニプロファーマ ベトナム南部の特徴 ベトナム最大の都市であるホーチミンは、最も経済活動が活発な地域です。メコン川流域(メコンデルタ)では、農水産物の収穫量も多く、海上輸送の重要拠点としても栄えています。特に、食品加工や繊維・縫製産業における進出企業数が多く、中小・零細企業も古くから進出していました。 南部を選択する第一のメリットは、経済的に最も活発・成熟した地域であり、ベトナム最大の消費市場を有することです。近年は特に、小売業やサービス業の進出が盛んにおこなわれています。さらに、ASEAN市場へ交通面でも利便性が高く、物流に関するインフラも整備されています。歴史を振り返っても、資本主義体制の導入が他の地域に比べ早く進んだことから産業基盤が整備されていることも魅力と言えます。 一方、デメリットは、外国企業の進出増加により、優秀な労働者の確保が困難になっている点が挙げられます。特に、中間管理職となる人材の不足に頭を悩ませている企業も少なくありません。また、過熱気味ともいえる不動産投資により土地価格が急騰しており、オフィスの賃料も年々上昇している状況です。 ベトナム南部へ進出した主な日系企業 現地の消費市場を目的とした企業が多く進出しています。 産業 日系企業 自動車 三菱、スズキ、いすゞ、マツダ 二輪車 スズキ 家電 パナソニック、JVC、三洋電機、ソニー、東芝 電子電機機器 富士通、矢崎総業、日本電産 小売業 イオン、セブンイレブン、ミニストップ 製薬 久光製薬、ロート製薬、資生堂 不動産開発、販売 東京急行電鉄 食品 丸善食品、エースコック、味の素、ヤクルト 外食 丸亀製麺、吉野家、すき家、大戸屋 インフラの整備状況 長期にわたる戦争の影響もあり、ベトナムでは産業基盤の整備が遅れています。日本のODAや世界銀行、アジア開発銀行(ADB)などの援助もあり、現在急速に整備が進められています。 現状では、特に電力の分野で他のアジア諸国に劣る印象があるものの、今後は多額の国家予算(日本のODA事業を含む)がインフラ整備プロジェクトに投入されることが予定されており、近い将来には大きな改善が期待できます。 道路敷設 総距離数では、タイ、インドネシア、フィリピンと比較して、ベトナムが下回っています。そして、ハノイ、ホーチミンなど都市部でも、道幅が狭く、かつ産業道路と生活道路が共用となっていることや、車・バイク・自転車といった路線区分がないことが多い為、通勤時間帯には渋滞が発生します。 経済回廊(「南北経済回廊」「中越経済回廊」「東西経済回廊」の3回廊)の完成後には、北部の中心であるハノイ、中分の中心であるダナン・フエ、南部の中心であるホーチミンは、インドシナ半島の各国と陸路で繋がることになり、国内の物流体制の大幅な改善が期待されます。東南アジア最長のハイバントンネル(ハノイ~ホーチミン~カーマウ間)の開通や南北高速道路(ハノイ~カント―)の建設も進んでおり、さらなる物流の円滑化と、地域経済開発の促進が期待されています。 鉄道 現在の鉄道の問題点としては、電化されていないこと、車両が古いこと、線路が劣化していること等が挙げられます。ハノイ~ホーチミン間については、現在の旅客列車では最短でも約30時間を要します。現在、ハノイ~ホーチミン間の高速鉄道計画が進んでおり、第1期(~2030年)は、ハノイ~ヴィン(グアン省)間とニャチャン(カインホア省)~ホーチミン間、第2期(2030年~2045年)は、ヴィン~ニャチャン間が完成する計画です。完成が実現すれば、ハノイ~ホーチミン間が10時間程度で移動できるようになります。 電力 ベトナムの主要な産業エネルギーは、水力発電と火力発電です。しかし、水力発電は、水不足の影響を受けやすく、電力不足の原因となっています。また、送電設備も全体的に老朽化が進んでおり、電力損失率が高くなっています。そのため、ほとんどの日系工業団地は自家発電設備を整えています。さらに、ベトナム政府も電力供給量の拡大に努めており、第8次国家電力マスタープランによると、再生可能得エネルギーの開発強化、送電線システムの改善と開発強化などが提案されています。 ※グラフのデータは『一般社団法人 海外電力調査会(JEPIC)』参照 空港 現在、国内には主な3つの国際空港(ハノイのノイバイ空港、ホーチミンのタンソンニャット空港、ダナンのダナン空港)が存在します。 南部では、タンソンニャット空港の大幅な需要超過を受けて、ホーチミンから約40km離れたドンナイ省のロンタインに新しい国際空港の建設が計画されています。新国際空港が完成すれば、現在のタンソンニャット空港は国内線の空港として利用される予定です。 港湾 ベトナムは、国土が南北に細長く、長い海岸線を有するため、多数の港湾が点在しています。しかし、ほとんどが河川港で大型船舶が寄港できる大水深港がなく、香港やシンガポール等での積み替えを余儀なくされており、時間とコストがかかります。日本~ベトナムを結ぶ航路も主にシンガポールや香港を一旦経由することが多くなっています。 急速な経済成長及び国内市場の拡大に伴い貨物需要が増大、需要に見合う港湾整備が必要となり、国際的な物流拠点として水深港を整備する必要性も大きくなってきています。2018年には、水深14mの大深度国際港であるラックフェン港が開港しています。 通信 ベトナムでは携帯電話が普及しており、利用料金も非常に安く、ホーチミン市内では、無料Wi-fiサービスを提供する飲食店等も多くなっています。ベトナム全土において通信環境は良好であり、企業によっては工場内のIT化も進んでいます。 ※ドイツの市場調査会社スタティスタ(Statista)調査データ ベトナムの工業団地 工業団地とは一定の区画された敷地に工業集積を図り、電力供給施設や通関事務所、居住用の団地等を設置し、効率的な生産を目的として設立されるものです。当該地域においては、外資系企業への優遇税制等、様々なインセンティブが設けられています。日系企業のうち、製造業の多くは、主要都市の近郊にある日系工業団地、またはインフラの整った日系以外の外資系工業団地やローカル工業団地に入居しています。 日系工業団地は、ベトナムのローカル工業団地に比べ利点が多いと言えます。例として、会社設立から投資申請、工場の操業まで現地日本人スタッフによるサポートが受けられます。この点は、初めてベトナムに進出する企業にとっては、大きな魅力となっています。 一方、ローカル工業団地は、土地賃借料の安さが最大の魅力です。ただし、日系工業団地と同レベルのインフラ、各種サポートを望むのは難しいのが現状です。しかし、ベトナム政府主導による外資系企業誘致政策の一環で、充実したサービス(日本語での支援を含む)を提供するローカル工業団地も現れています。 工業団地については立地条件、道路、電力、水、通信、管理、サービスなど千差万別であり、自社の許容レベルに合わせて検討することが大切です。 ベトナム北部 北部では、ラックフェン港の開発や高速道路の開通により、生産拠点としての魅力が増しており、外資系企業の進出が増えています。既存の外資系工業団地の販売区画もほぼ完売状態にあることから、ローカル工業団地への進出が目立っています。しかし、ローカル工業団地では、区画販売後に造成開発契約の遅れやインフラ整備にあたりトラブルが生じるケース、地理条件等の情報が不十分なケースもあるため、既に進出している企業への聞き取りや周辺調査、経験の豊富な日系の建設業者への相談が望ましいと言えます。 ※北部の主な日系工業団地 〇 日本ハイフォン工業団地(旧 野村ハイフォン工業団地) 〇 第一タンロン工業団地 〇 第二タンロン工業団地 〇 第三タンロン工業団地 〇 VSIPバクニン工業団地 〇 VSIPハイフォン工業団地 ベトナム中部 以前、中部には日系工業団地はありませんでしたが、東西経済回廊の開通などを見越し、近年日系を含む外資系産業の進出も増えてきています。工業団地をはじめとして、各種インフラや生活環境整備の一層の充実が今後の課題となっています。 ※中部の主な日系工業団地 〇 VSIPクアンガイ工業団地 ベトナム南部 南部は日系企業の進出の歴史も古く、最も多くの外資系企業が進出しています。日系をはじめ様々な工業団地が数多くあります。しかし、外資系企業の進出が相次いだことでホーチミン近郊の工業団地は常に人気が高く、希望してもなかなか入れない状態が続いています。特に、既存の日系工業団地は、ここ数年拡張部分も含め需要が高く、将来的な建設予定部分を除いてはほぼ完売状態となっています。 ※南部の主な日系工業団地 〇 アマタ工業団地 〇 VSIPⅠビンズン工業団地 〇 VSIPⅡビンズオン工業団地 〇 VSIPⅢビンズオン工業団地 〇 ロテコ工業団地 〇 ロンドゥック工業団地 その他:リース工場 ベトナム政府は、国内の裾野産業の育成を目指し、当該技術を供与する外資系企業の積極的な誘致を進めています。このため、部品産業等においては外資系企業、なかでも中小・零細企業の進出の増加が期待されています。中小・零細企業にとって工業建設はリスクが大きいため、注目されているのが「リース工場」です。 リース工場とは、工業団地内の作業スペースを、リース契約に基づき貸借して生産を行う形態で、安価な賃借料で作業スペースを確保し、機械や設備を持ち込むだけで、直ちに生産を開始できるという手軽さが魅力となっています。低コストでベトナムへ進出することが可能なため、今後も需要の高まりが予想されます。なお、日系リース工場は、人気が高いため空いていないことも多く、事前の調査が必要です。 明倫国際法律事務所では、ベトナム(ハノイ・ホーチミン)にも事務所を構えております。日本人弁護士はもちろん日本語ができるベトナム人弁護士、パラリーガルが常駐し、迅速的かつ適切に対応できます。今回、記載した内容のサポートはもちろんのこと、初期の検討段階から実際の設立、その後の運用支援まで、ワンストップで対応しています。また、コンサルティング会社では担うことのできない、発生したトラブルの解決、紛争対応などの対応は、もちろん未然に防ぐための企業戦略のコンサルティングサポートも可能です。「海外進出や販路拡大について広く知りたい」「現地の投資環境について全体像を掴みたい」等のご相談も承っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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