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ベトナムの進出のための情報や、コンプライアンスや契約・紛争などの進出後の問題、基本的な規制や最新の法改正など幅広い情報を提供します。

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ベトナムにおけるバイク・ツーリズムと問題点

2022/11/14  

弁護士:布井 千博

 

 ベトナムでは、バイクは庶民の足としてだけではなく、今や外国人旅行客にとっても重要な移動手段として用いられています。とくに個人旅行の場合は観光地での交通の便が悪いため、レンタルバイクをすることが一般的に行われています。バイクのレンタル料も手ごろで、1日5ドルほどから借りられます。また、最近注目されているベトナム北部の観光地ハザン(Ha Giang)などは、全行程4日間で山岳地帯をレンタルバイクで踏破するという周遊プランが好評で、とくに欧米の若者に人気があります。

 ここで皆さんは、ベトナムでバイクを借りるのには免許がいらないのか疑問に思われるかもしれません。まず、ベトナムでは排気量50ccまでのバイクについては免許が不要です。ただし、レンタルショップで借りるバイクの多くは排気量100cc前後のバイクです。この場合、当然のことながらベトナムの道路交通法上、バイクの免許(排気量175ccまでのバイクに乗れるA1ライセンス)が必要です。無免許運転は当然のことながら禁止されます(2008年道路交通法)。

 自国において二輪免許を持っている場合でも、ベトナムでは、日本の国際免許証や免許証は通用しません。国際免許については、ベトナムが加盟する道路交通に関するウィーン条約が、日本が加盟するジュネーブ条約と異なるため、ベトナムでは日本で発行された国際運転免許証が有効でないのです。また、外国免許からベトナム免許への切替えには、ベトナムの滞在許可証や長期滞在ビザが求められるため(2017年通達12号)、免許の書き換えは通常の旅行者には困難です。日本人旅行者に限らず、外国人旅行者がバイクを運転する際には無免許であることがめずらしくありません。

 ベトナムでは、無免許運転に対する制裁は日本と比べて軽微です。175ccまでのバイクについての無免許の罰金は、最近の改正で引き上げられたとはいえ、100万ドンから200万ドン(米ドル換算で約50~100ドル相当)です(2021年政令123号21条)。また、日本のように無免許だけで懲役刑が課せられることはありません。ただし、重大事故を起こしかつ無免許であった場合には、3年以上10年以下の懲役に処せられる可能性があります(刑法260条2項)。これ以外に注意すべき点は、交通違反を摘発した警察に違反者のバイクを没収する権限が認められていることです。バイクを没収されると、罰金の決定が行われまでバイクを返してもらえません(政令123号82条)。無免許でレンタルバイクを運転する場合、没収のリスクを抱えることになります。

 ところで、ベトナムでは交通警察に汚職が蔓延しており、無免許で捕まってもワイロを渡せば放免されることが常識となっています。ワイロの額は、それこそケースバイケースですが、外国人の場合には50万ドンから100万ドン程度ともいわれています。レンタルバイクで警察に捕まった場合、バイクの没収というリスクもあるため、ワイロを支払わざるを得ない状況です。当然のことですが賄賂の支払いは刑事罰の対象で、200万ドン以上の賄賂を渡せば、理論上ではありますが、6月以上3年以下の懲役に処せられる可能性があります(刑法364条1項)。

 これ以外にも無免許での事故には保険金の支払いが認められないなど、無免許運転には様々なリスクが伴います。ベトナムは、俗化がそれほど進んでいない観光地が数多く残されています。街角の旅行会社では日帰りや短期のバス旅行が数多く販売されています。皆様には無免許運転のリスクを冒さず、ベトナム旅行を楽しんでいただければと思います。