現地法人の所在地移転時の注意点

弁護士:原智輝 パラリーガル:Hanh Le   会社本店の移転など所在地が変更される場合、所在地と関係がある設立証明書、各ライセンス、その他会社書類の修正を考える必要があります。原則として、ある書類に記載される情報を変更すると、その書類の変更手続を行う必要があります。    • 現地法人設立に関する証明書           √ IRC(投資登録証明書): IRC変更手続           √ ERC(企業登録証明書): ERC変更手続  • 印鑑 社印が住所表記を含んでいる場合、社印の変更手続も必要です。現行の投資法・企業法に基づき設立した企業では、公的手続を経ずに社印を更新できますが、他の企業(例えば:外国商人の支店、外国商人の駐在員事務所、法律事務所等)は公安省・公安局で社印変更を登録する必要があります。  • 税務機関への通知 税務局は外資系企業を管理している関係上、同一県内で住所を変更する場合、担当機関は変更されず、税務機関への通知のみが必要となります。実務運用上は通常ERC変更手続をポータルで行う際に税務機関へ通知できます。 一方、県をまたぐ移転の場合、税務担当機関を変更する必要があるため、より複雑な手続となります。上記の税務機関への通知手続の他、現地法人に関する証明書変更前に税務担当機関にて会社の税務義務の確認手続を行うことが必要です。新ERCを取得した後、税務機関への通知手続を行います。  • 社会保険への通知 会社住所の変更は労働者の勤務場所及び労働者の社会保険に関するので、社会保険機関に通知する必要があります。同一県内で住所を変更する場合は、社会保険担当機関は変更されないため、通知手続の必要はありません。 一方、県をまたぐ移転の場合、社会保険担当機関を変更する必要があるため、通知手続が必要になります。現地法人に関する証明書変更前に旧担当機関で社会保険停止手続をし、新ERCを取得後に新担当機関で社会保険の登録手続が必要です。  • インボイスに記載される住所の変更:税務機関への通知手続のみではインボイスのアプリケーションと連動していないためインボイス アプリケーション上で住所変更する必要があります。  • 外国人の労働許可証:労働者の勤務場所に関係があるため更新が必要となります。  • 銀行への通知:法令上の要請ではありませんが、通常は所在地変更の届け出が必要となります。   上記の各手続を行わない場合、以下のようなリスクがあります。    • 現地法人設立に関する証明書の場合:IRC又はERC変更を行わない場合の罰則。     – IRC:70,000,000 VND から100,000,000 VNDの罰金及び変更手続(政令No. 122/2021/ND-CP第 17 条2 項 b号)           – ERC:20,000,000 VND から30,000,000 VNDの罰金及び変更手続(政令 122/2021/ND-CP第 44 条5項)  • 税務、インボイス、社会保険について: 税務局からの納税書その他の税務に関する通知書が全て旧住所に転送されるため、会社は当該文書を受領できず、税務局との応答に支障が生じます(社会保険機関も同様)。また、税務局が検査を行う場合、企業登録証明書に記載されている所在地で検査を行うため、変更届出がなされていないことが発覚し、罰金が科される場合があります。最悪の場合、税務局はその会社の税コードを閉鎖でき、事業登録証明書を回収するように計画投資局に通知する場合があります。(通達105/2020/TT-BTC第17条参考)  • 外国人の労働許可証:外国人労働許可証の内容と一致しない外国人労働者を雇用した場合、各従業員に5,000,000 VNDから 10,000,000 VNDまでの罰金が科せられます。(政令 28/2020/ND-CP第 31条2項)