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ベトナムの進出のための情報や、コンプライアンスや契約・紛争などの進出後の問題、基本的な規制や最新の法改正など幅広い情報を提供します。

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ベトナム駐在員弁護士によるベトナム法解説~ベトナム上場株投資の注意点~

2021/11/08  

 現在、堅調なベトナム経済を背景に、ベトナム上場株式への投資が、日本の個人・法人を問わず、徐々に増加している状況です。このようなベトナム上場株式の取引では、多くの場合には投資信託などに組み込まれた商品の取引や、法的に問題の生じない少額の取引が多いため、特段問題が生じることが多くないのですが、大口の取引についてはベトナム証券法等の各種規制により、日本人又は日系企業についても罰則等を課された事例もあります。そのため、ベトナム証券法についての規制を把握することは重要といえます。

そこで、本稿では、ベトナム証券法の規制について基本的な内容を弁護士の盛一也が解説します。

大量報告規制について

 ベトナム証券法では、日本と類似の大量保有報告規制が設けられています。具体的には、公開会社について直接又は間接的に発行会社の議決権の5%以上の株式を保有することになった株主などは、当該公開会社、証券取引委員会及び証券取引所などに大量保有報告書を提出する必要があります。また、大量保有報告書の記載事項に重要な変更が生じた場合や、議決権割合が1%を超えて壮言した場合などに追加報告書を提出する必要があります。

日系企業等の例について

 2018年8月15日、国家証券委員会(SSC)の監察官は、日本のアイザワ証券に対する行政違反の制裁に関する決定No.206/QD-XPVPHCを発行しました(住所: 東京都港区東新橋一丁目9番1号 東京汐留ビルディング)。具体的には以下の通りです。

 同社は、ベトナムの上場会社であるVisaco(VMI)株について、4.86%から5.58%、6.31%に持株を増やす等の取引を行った際に報告を届けたものの、内容に誤りがあった等により、政府令第1項第27条、2013年9月23日付のND-CP、法令第108/2013/ND-CP)は、政府令第145条第1項第1項第1項、2016年11月1日、法令第108/2013/ND-CP(法令第145/2016/ND-CP)等により、1,000万VND(≒5万円)の罰金が科されました。

インサイダー取引規制について

 ベトナム証券法等では、日本と同様にインサイダー取引規制が設けられています。具体的には、①自己又は他人のためにインサイダー情報を利用して証券の売買を行うこと②意図があるかを問わず、インサイダー情報を他人に提供すること③意図があるかを問わず、インサイダー情報に基づき他人に証券の売買に関する助言をすることなどが禁止されています。 

 また、インサイダー取引に対する行政罰金は、違法に取得した収入の10倍となり高額ですし、違反行為の重大性により、違反者は刑事処分を受ける可能性もあります(個人に対しては、6か月から7年以下の懲役に処し、法人に対しては、1年以上3年以下の期間、一定の領域における事業の禁止又は1年以上3年以下の期間について、資金調達の禁止の措置が適用されることがあります。)

 ただし、ベトナムの証券市場では、取り締まられていないインサイダー取引も多く、今後の課題となっております。

相場操縦規制について

 インサイダー取引と同様に、相場操作も証券法の規定に対する重大な違反であり、違反程度に応じて行政罰又は刑事処分が科されます。ベトナムにおいて、相場操縦とは、①虚偽の需要、供給を作り出すために、自己又は他人の一つ又は複数の取引口座を使用するか、互いに共謀して証券を売買すること②他人と結託し、他人を引き入れる形式で証券の売買注文を行い、証券価格を操作すること③証券価格を操作するために他の取引方法を組み合わせて使用したり、誤った噂を広めたりすることなどを意味するとされています。

 相場操縦行為についての行政処分と刑事処分は、インサイダー取引の場合と同様です。

インサイダーと相場操縦の具体例

 ベトナムにおける報道等によると、上場企業の経営に関与している者が世間に公開前の情報を外部に漏らし、また、他者と連携して相場操縦を行うことで、市場を欺くことは多くみられるとのことです。ただし、インサイダー取引や相場操縦について、具体的に行政や刑事罰を受けることは、その証明が困難であるため、行政罰金又は刑事処分が課せられたケース、特にインサイダーのケースはかなり少ないようです。

 ベトナム人の例にはなりますが、2020年7月に、国家証券委員会(SSE)の検査官は、ホーチミン証券取引所(HoSE)に上場しているCity Auto JSCのCTF株を操作し、また、22の口座を使用して取引した行為に対し、ホーチミン市のタンタンドグループ株式会社に12億VND(≒600万円)、ドン・ゴ・ヴァン・クオン氏に5億5000万VND(≒275万円)の罰金を科す決定を下しました。

まとめ

 最後に、ベトナム経済の好調は今後も継続することが見込まれており、株式投資だけでなく、ベトナムに法人を設立し事業を営む企業も着実に増加しています。弊所ホーチミンオフィスでは、ベトナムへ進出を検討されている企業様の相談を随時承っておりますので、ご関心がある皆様は随時お問い合わせ(secretary-vn@meilin-int.com)いただけますと幸いです。