ベトナムにおける広告規制の概要
ベトナムにおける広告活動は、広告法(No.16/2012/QH13)、広告法を含む修正法(No.35/2018/QH14)及び関連政令により規定が置かれています。関連政令の例としては、広告法の詳細を定める政令(No.181/2013/ND-CP)、文化・スポーツ・観光及び広告分野における行政処分に関する政令(No.158/2013/ND-CP)などがあります。その他にも、2004年競争法、2005年商法、2013年土地法、2013年建設法等の特別法においても、広告活動に関する規定があるため、広告内容によっては、これら特別法における規定にも注意を払う必要があります。
なお、広告活動のうち、事業者が自ら行う広告活動については、事業者自らが決定した方法により自己の商品、役務について広告を行うことができますが、その場合でも広告内容に関する規定への適合性が必要です(広告法第12条)。
広告活動の詳細について、法は広告手段として、新聞、ウェブ、印刷物をはじめとする種々の広告手段を認めています。他方で、広告の内容としては、次のようなものが禁止対象とされています。
- 営業禁止商品、役務
- タバコ、アルコール15度以上の酒類
- 24か月未満の幼児に対する母乳代替乳製品
- 6か月未満の幼児に対する栄養補助製品
- 哺乳瓶又は哺乳瓶の乳頭、処方用医薬品や医師の監督を要する医薬品
- 性的刺激商品
- 猟銃及びその弾丸
- スポーツ武器、並びに暴力刺激製品・商品
- 政府により定められる他の製品・商品・役務
このほか、ベトナム国家の独立・尊厳・国旗・国歌・党旗や組織・個人の名誉・威信を損なう広告が禁じられ、特に注意が必要なものとしては、他の組織・個人の同種の商品、役務と直接価格、品質、効果などを比較する比較広告、「第一」、「唯一」、「最良」、「最高」又は同様の意味を有する他の言葉を利用する広告等も禁止されている点に注意が必要です。
広告活動において、近時発展している電磁的な方法を用いた広告には、これに応じた規制があります(No.91/2020/ND-CP)。
電話や電子メールによる広告は、個人のプライバシーや権利を保護するため、一度拒絶された場合の再度広告などは行政処分を受けることになります。この他、広告の言語や広告手段ごとの詳細な条件も定められています。
例えば、テレビで広告する場合、ドラマを放映している際は、2回までしか広告できず、1回の広告で5分を超えてはならないとされています。
ゲームショーを放送している場合、4回までしか広告できず、1回で5分を超えてはならないとされています。
ウェブサイトで広告する場合、広告内容が固定されていないときは、読者が1.5秒以内に当該広告を開閉できるように設定しなければならないとされています。
広告内に対する規制としては、一般広告と特別広告の区別に従って規制が置かれています。一般広告(特別広告に該当しない場合)に対しては、内容に対する規制は特段置かれていません。
医薬品等の指定された内容の広告に属する場合、政府当局に広告許可証を申請し、その内容に関する事前審査を受ける必要があります。このような広告許可証を必要とする製品、商品、役務は、医薬品、化粧品、化学物製品、子供用栄養食品、食品・食品添加物、健康診断病気治療サービス、医療設備、農薬、獣医薬等が挙げられます(広告法第20条4号)。
広告規制に違反した場合、民事上の損害賠償責任を負うほか、行政処分、或いは刑罰が予定されています。
行政処分では、広告禁止商品、役務について広告した場合、4千万ドン(約20万円)から1億ドン(約50万円)までの罰金が定められています(政令158/2013/ND-CP号第50条)。知的財産法に違反した広告、個人の同意を得ずに、その映像・発言等を利用した広告の場合は、2千万ドン(約10万円)から3千万ドン(約15万円)までの罰金(政令158/2013/ND-CP号第51条2項)、広告にベトナムドンのイメージを使うと、5千万ドン(約25万円)から7千万ドン(約35万円)の罰金が規定されています(政令158/2013/ND-CP号第51条5項d号)。
刑事責任については、詐欺的な広告罪は、2015年刑法(2017年改正)の第197条によれば、罰金(最大1億ドン)、3年以下の非拘束矯正、1年以上5年以下就業禁止が定められています。なお、当該広告が詐欺罪に該当する場合、無期懲役まで発展する可能性があるため非常に注意が必要です(刑法第174条)。
実際の例として、医療サービスや化粧品に関する広告が広告法に違反した事案での処分された事例が目立ち、広告許可証を受けていない化粧品広告で、3千万ドンから3千5百万ドンまで(約16〜17万円)、経営登録証に書いている分野と違う事業の広告で1千2百50万ドン(約6万円)の罰金を科される事例が確認されています。