弁護士 原 智輝 工場などの従業員が多い事業形態において、その勤怠管理は重要項目の一つに挙げられます。特に、グローバルに事業を展開している企業においては、単に使用者(企業)と労働者の関係としてのみならず、昨今のSDGsなど社会に対する関係としても労務管理というものを考える必要があります。 ベトナムにおける勤怠管理については、例えば残業代に関する法令が労働法の中に定められており、以下のような基準で計算することとなっています。 【ベトナム労働法98条1項(割増賃金)】 ・通常の勤務日の場合は150% ・週休日の場合は200% ・祝日、旧正月、有給休暇時の場合は300% ここでいう、割増の対象となる賃金単価の計算方法ですが、政令(No.145/2020/ND-CP)55条1項に関連規定が置かれており、実労働時間から算出することとされています。そのため、一般的な労働者においては、月の労働時間単価が当月の祝日数、休暇日数などによって異なり得ることとなります。例えば、ある月の勤務日数が20日である場合と25日である場合とでは、前者の方が上記の150%などを乗じる対象の賃金額が高いということになります。 これを避けるために、一定の企業では就業規則内に残業(時間外労働)算出における毎月の勤務日数を固定の日数として定める場合も見受けられます。例えば、月の勤務日数はその月の実勤務日数にかかわらず、20日として時間外労働における割増賃金を計算するといった具合です。 注意点としては、基本賃金単価を下げようとして、1か月の勤務日数を30日など、法定の勤務時間を超過するような方法はとれないという点になります。労働法(105条1項)において、労働時間は1日8時間、週で48時間を超えることはできないため、1週当たり6日(48時間)の労働が最大となります。そのため、このような数値を超える勤務時間を就業規則で定めることはできません。 時間外労働に関する実際の計算においては、上記計算式を認識していない方も多いため、この機に一度就業規則の見直しや、時間外労働についての点検を行ってみてはいかがでしょうか? 以上
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