ベトナムで株式や持分を譲渡する方法で撤退する場合の手続と注意点を教えてください
撤退の対象となる法人の種類や定款の定めにより譲渡制限や譲渡手続が設けられている場合があります。
株式や持分を譲渡する方法によるベトナム事業からの撤退は、法人は存続し続けるものの、株式や持分の譲渡方法につき、法人の種類ごとに手続が異なるため、対象となる法人の種類に応じた手続を踏む必要があります。また、定款において手続が修正されていることもあるため、対象会社の定款を確認することが必要です。なお、株式や持分の譲渡については主に企業法(68/2014/QH13)が定めています。
二人以上有限責任会社における持分譲渡については企業法53条に定められており、自己の持分の全部または一部を他人へ譲渡しようとする社員は、他の社員に対して、他の社員の持分割合に応じた同一条件による売却を申し出なければなりません(同条1項a))。そして、売却を申し出た日から30日以内に当該申出に応じる社員がなかったときは、他の社員に申し出た条件と同一の条件にて自己の持分を譲渡することができます(同項b))。なお、持分譲渡者は、当該持分を譲り受けた第三者が社員登録簿に記載されるまで、依然として会社の社員として権利義務を負うこととなります(同条2項)。
一人有限責任会社における持分譲渡については企業法75条1項h)及び2項c)に定めがあり、当該一人有限責任会社の所有者の持分譲渡権が法定されています。ただし、一人有限責任会社において社員総会を設置している場合は、社員総会出席社員の4分の3以上の賛成を得なければなりません(法79条6項)。
株式会社における株式譲渡については、企業法114条1項d)により自由譲渡が原則とされています。この例外として、発起株主が企業登記証明書(ERC)取得日から3年間は自己の持株を、発起株主でない者へ譲渡できますが、この場合、株式の譲渡について、株主総会において、議決票総数の51%または定款に定める割合の株主が出席したうえ、出席株主の51%による賛成決議が必要となります(法119条3項、144条2項)。この場合、譲渡株主は議決権がありません(法119条3項)。また、定款により譲渡制限が定められ、かつ当該株式の株券にその旨明記されている場合は、定款の定めに従った譲渡制限を受けることとなります(法126条1項)。さらに、議決権優先株式を保有する株主が撤退を図る場合も、譲渡制限が定められているため注意が必要です(法116条3項)。この場合、譲渡制限株式を普通株式に転換させたうえで譲渡手続を行います。最後に、グループ企業間での株式譲渡につき企業法は、株式会社に対して50%を超える資本率や役員等選任権を直接又は間接的に有するなどの影響力を持つ法人を親会社と定義し(法189条1項)、子会社による親会社株式の購入、子会社間の株式の購入等を禁じています(同条2項)。
その他、株式会社がベトナム証券法(70/2006/QH11)上の公開会社(譲渡制限の有無ではなく、株券公募を行うなど広範囲の投資家に影響を与える会社)に該当する場合は、別途証券法の定める各種規制を受けることになります。
株式譲渡手続については企業法126条2項において、通常の契約による方法と、証券市場取引を通じた方法が定められています。多くの場合は非公開会社の株式譲渡ですが、この場合譲渡契約には書面により譲渡人と譲受人(又はその代理人)の署名が必要とされています。有限責任会社と異なり書面が求められている点が特徴的です。