ベトナムでは土地や建物などの不動産は所有できますか。使用権と所有権はどう違いますか。
土地及び建物の所有については、民法(91/2015/QH13)197条に定めがあり、土地は全人民の所有に属する公共財であり、国が所有者を代表し、統一的に管理を行うとされています。なお、同趣旨の規定がベトナム憲法53条にも置かれています。これに対して、建物はこの公共財に含まれていません。このため、土地については国家が所有権者であり、個人又は法人がベトナムの土地の所有権を取得することができないとされています。他方で、建物は公共財でないため、民法221条1項又は4項などで定められている所有権発生を満たす限りにおいて、個人又は法人がこれを取得することができます。特に建物の所有権の発生について問題になることはないかと思われますが、通常建築行為などが所有権発生要件を満たすと考えられます。
ベトナムにおいては、このように土地は国が所有し、建物は個人又は法人が所有するため、理論上建物を所有する者は土地を不法占有している状態となります。そのため、土地については土地使用権限を取得する必要があり、この使用権限に関する法令として土地法(45号/2013/QH13)があります。一般的に、土地使用権限を取得するには、国から交付の方法により取得する方法と、土地使用権を有する国などから賃貸に基づき取得する方法とがあります(法53条)。
土地法上、土地使用権が外資系企業に認められているのは、当該外資系企業が販売し、又は販売/賃貸用住宅の建設投資案件を実施する場合のみとされています(法55条3項)。なお、外資系企業が賃貸を行いたい土地の所在地が、工業団地、工業区、加工輸出区に属している場合は、これらの地区におけるディベロッパーからサブリース(転貸借)の形式により土地使用権を取得することができます(法149条3項)。
このように、ベトナムでは制度上土地の所有権は取得できず、使用権を取得できるにとどまります。これに対して、建物については所有権を取得することが可能です。また、所有権と使用権の差異については、所有権は、占有、使用収益及び処分などの面において法令の定めを除き自由に権利者が行使することができますが、使用権の場合、その使用に対価が生じたり、賃貸契約により使用目的が設定されるなどある程度の制限を受けつつ使用収益が可能という点にあります。
ベトナムの不動産法制度と不動産取引
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