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ベトナムでは、契約書はベトナム語で作らなければなりませんか。
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ベトナム法においては、特別法の規定によりベトナム語での作成が義務付けられている場合を除き、契約当事者が契約時の言語を自由に選択することができます。
ベトナム法に基づき契約を締結する場合の言語に関する留意点は、次の2点が挙げられます。
契約当事者間の関係性
ベトナム法においては、原則として、契約に用いる言語の選択は、契約当事者に自由に委ねられています。これは、ベトナム民法や、多くの企業がかかわるベトナム商取引を規律するベトナム商法において契約に用いる言語が定められていない反面、特別法においては、ベトナム語での契約書作成が求められていることから理解することができます。
例えば、ベトナム法令において、契約書の使用言語をベトナム語と指定している契約類型には、次のものが挙げられます。
消費者契約(第59/2010/QH12号、第14条2項)
原則としてベトナム語が選択され、これを変更するためには当事者間の合意か別途法令の定めが必要となります。
郵便サービス契約(第49/2010/QH12号、第9条2項)
契約書自体はベトナム語で作成されなければなりません。ただし、外国語を用いることについて当事者の同意がある場合は、当該外国語で作成された契約書が効力を持つことになります。
建設契約(建設業法に関する政令第37/2015/ND-CP号、第11条2項)
ベトナム語による契約書作成が求められています。外国における建設契約については、英語を契約書言語として選択した場合や、使用言語の選択合意がない場合は、英語を用いることができます。
国家及び契約における各当事者の関係
作成文書を監督官庁に提出等する場合、ベトナム語で作成された書面の提出等を求められるか、外国語作成の場合はその翻訳文を求められることが多く、文書作成時の言語選択には、使用方法も含めた検討が必要になります。
また、契約書作成の究極的な目的は、契約書において定めた権利義務を最終的には司法(裁判手続)によって実現する点にありますが、ベトナム民事訴訟法(第92/2015/QH13号)第96条3項では、裁判で用いる証拠資料についてベトナム語の翻訳文添付を求められています。
その他、ベトナム語の資料提供が求められる典型例としては、税法、会計法又は公証法に関係する文書作成時が考えられます。
以上のような留意点があることを踏まえると、必要に応じて、日本語や英語による契約書作成だけでなく、ベトナム語での作成の必要性を検討するべきといえます。