ベトナム進出情報Q&A

ベトナムの進出の際のキーポイントや注意すべき点などをQ&A形式で
お伝えします。

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ベトナムで、署名権限がない人が署名した契約書は無効ですか。 ベトナムで、署名権限がない人が署名した契約書は無効ですか。

ベトナムで、署名権限がない人が署名した契約書は無効ですか。

契約管理
ベトナムで、署名権限がない人が署名した契約書は無効ですか。 ベトナムで、署名権限がない人が署名した契約書は無効ですか。

ベトナムでは、原則として署名権限がない者が署名した契約書は無効となります。ただし、署名権限のない者が署名した契約書であっても、法律の規定に基づき、無権代理又は越権代理が成立し、例外的に有効と扱われる場合もあります。

ベトナム法において、署名権限がない者がした契約書に関する事項は民法(91/2015/QH13)が定めており、本人以外の者が本人に代わって署名を行う場合、すなわち代理人としての代理行為は同法134条、141条1項により、本人からの授権の他、一定の事項に該当しなければ有効に成立しないのですが、この点は日本国内法と差はありません。そのため、次に説明する無権代理規定や越権代理規定の適用がなければ、署名権限がない者が署名した契約書は無効として扱われます。

ベトナム民法における無権代理及び越権代理に関しては142条及び143条に定めがあり、前者は基本となる代理権が存在せず全くの無権限の状態であり、後者は基本となる代理権はあるものの代理権が与えられていない事項について代理を行ったという違いがあります。しかし、条文構成上は大きな差は認められません。いずれの場合も、無権代理/越権代理が行われた際に、本人が承認/同意し、知りながら合理的期間内に反対しない、代理行為が無権代理/越権代理であることを相手方が知らず又は知ることができなかったことについて本人に過失があるときに例外を認めています。例えば、自社従業員が無断で会社名義の契約書に署名を行った場合おいて、これを認識しつつも対応を漫然と怠ってしまった場合などは、会社に対して契約書の効果が帰属することとなります。逆に契約相手方の署名が事後的に署名権者でないことに気づいた場合は、これらの規定を意識しながら対応することとなります。

なお、本人に効果帰属されない場合には、無権代理部分や越権代理部分に対する責任は代理人が負います(同法142条2項及び143条2項)。代理人と取引をした相手方は、無権/越権代理人が無権限/越権であることを知り又は知るべきであったのになお取引をした場合、または本人による承認/同意がない限り、当該無権限/越権部分について、解除権や損害賠償請求権を取得します。また、無権/越権代理人が相手方と故意に当該代理行為に及んだ結果、本人に損害が生じた場合は、代理人と相手方は連帯して、本人に対し責任を負います(同法142条4項及び143条4項)。

署名権限がない人が署名した契約書等の有効性について、以前より裁判でも争われており、立法上も2015年の民法改正の際、日本民法の表見代理に相当する制度を導入すべきではないかという様々な議論がありました。そのため、2015年の民法第1法案及び第2法案には、明確に表見代理制度が盛り込まれていましたが、残念ながら国会での可決には至りませんでした。このような中、公開されている裁判例では、民法142条及び143条を適用し、無権/越権代理行為を行った銀行員や会社の役員等が締結する契約の有効性を肯定する判断も出ていますが、無権/越権代理に関する立証責任の負担を考えると、企業間取引においては、特に次のような場面で注意を払う必要があります。

署名者が会社の法定代表者であるものの、署名権限を有しない場合:

一見すると会社代表者であるため、代表者としての署名権限を有しているのが通常ですが、法律又は定款の規定により、契約締結のために有限責任会社であれば社員総会、株式会社であれば取締役会の決定又は許可を得ることが求められている場合があります。その場合、契約を締結する前に、相手会社の定款や内部規則等を確認する必要があります。特に、金額の大きい取引の場合や利益相反に近い関係当事者間の取引の場合は、当該契約の締結権限の確認を十分に行うべきでしょう。なお、2014年より、企業登録ポータルサイトにおいて法定代表者の情報を含む企業情報を確認できるようになりました。取引時には、契約署名者とポータルサイト掲載の情報を照合することで、署名権限の有無を確認することができます。

② 署名者が会社の法定代表者でなく、署名権限を有する人の合法的な委任がない場合(例:委任されない場合の副社長、支店長、部長など)

署名者が会社の法定代表者でないものの、副社長、支店長、部長などの役職に就いている場合、役職から安易に代表権限があるものとして契約を締結しがちですが、海外取引においては、相手方や契約の重要度に応じて委任状の有無を確認すべき場面も生じます。委任状の確認を行う場合は、当該契約行為が委任状における委任事項の範囲内であるかの確認と、委任状の有効期間が切れていないか等の委任契約の有効性の確認が重要になります。