ベトナムで知的財産権にライセンス契約をする際の注意点を教えてください。
ベトナムにおけるライセンス契約の大きな注意点は、ライセンス契約が認められないケースがある点、ライセンス契約の内容について法定事項がある点、ライセンス契約の登録が必要な類型がある点、ライセンス契約種類などがあります。
工業所有権の所有者は、知的財産法(36/2009/QH12)123条1項a)により、他人の工業所有権行使を許諾するため、ライセンス契約を締結することができます。ただし、法142条では、工業所有権のライセンス許諾が認められない類型が定められており、地理的表示又は商号を使用する権利はライセンス許諾の対象とはなりません(同条1項及び2項)。またサブライセンス契約の場合は実施許諾者の許可が必要であり、団体標章においては団体標章所有者の構成員以外の者に許諾ができず、標章のライセンシーにはライセンス契約に基づく標章の利用であることを表示する義務が生じるなど、ライセンス契約自体は可能であるものの一定の制限が生じる場合があります(同条2項から4項)。また、一部の特許及び実用新案におけるライセンス契約においては、ライセンス契約後の義務として使用義務が課せられる場合があります(同条5項、136条1項)。
また、ライセンス契約は書面により行われなければならず(法141条2項)、内容についても法定され、契約において、双方当事者の正確な名称・住所、ライセンスの根拠、契約の種類、ライセンスの範囲、期間、ライセンス価格及び双方の権利義務を定めなければなりません(144条1項)。他方でライセンス契約に盛り込むことのできない事項も法定されており、法144条2項では、アサインバック、工業所有権が及ばない地域での実施制限等、品質保証を目的としない特定のサプライヤーからの購入強制、工業所有権の効力を争う権利の放棄が定められています。ライセンス契約の種類については、143条に定めがあり、排他的ライセンス契約、非排他的ライセンス契約、サブライセンス契約の3類型が定められています。排他的ライセンス契約は完全独占的ライセンス契約に相当し、ライセンサー自身も、ライセンシーの許可がなければ、実施を行うことができない点に注意が必要です。
次に、ライセンス契約が第三者への対抗力を有するには登録が必要となります(法148条2項)。ただし、ベトナムのCTPPT加入により、商標権についてのみ、登録をせずとも第三者への対抗力を有することになります。このライセンス契約の登録は、ライセンス契約がベトナム語以外の言語で締結した場合、国家知的財産権庁より翻訳の提出を求められるため、契約言語にも注意を払う必要があります。登録に必要な書類一式については、法149条各項に定めが置かれ、次のような書類が必要です。
①所定の様式により作成された契約書の登録請求書
②当該契約書の原本又は有効な謄本
③保護証書の原本(工業所有権の譲渡の場合)
④当該工業所有権が共同所有に基づくときは共同所有者の同意書
及び残りの共同所有者の不同意の理由の説明書
⑤手数料及び料金の領収書
⑥当該一件書類が代理人を通じて提出されるときは委任状