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コラム

COLUMN

海外向けEコマース(通信販売)の利用と注意点

企業経営・販売・広告

2021.07.09

 最近は、街中で外国人観光客の姿を見る頻度が各段に多くなりました。

 日本に来た観光客に商品を買ってもらい、帰国した後も安定したリピーターになってもらうために、ウェブサイトを利用した国際通信販売(Eコマース)を利用するケースが増えています。また、このようなリピーター目当てだけではなく、最近では、海外の市場を狙って進出したいけれども、それだけの資本や人材がないという場合に、まずは外国語のウェブサイトを作って、直接海外に通信販売をする形で、ローリスクで海外展開を図りたいという要望も増えてきています。

 このような場合に、私たちがまずアドバイスするのは、Eコマースだけに目を奪われず、実際の国内展開もあわせて注力してほしいということです。

 最近は、日本のものも海外でかなり普及してきており、「日本のものだから」とか「(安全安心で)良いものだから」というだけで売れるほど、甘くはありません。そのようなときに、海外で最初に売れるかどうかを左右するのは、実は、国内での知名度・注目度なのです。

 日本に来た外国人が、「日本で見た」「日本で行った」「日本で話題になっていた」といったような情報を持ち帰り、その結果、海外でも、「日本で売れている○○」という形で、日本に来たことがない人にも広がっていくというパターンが、一つの成功法則として見られるようになっています。もちろん、日本での知名度や注目度があれば、海外でビジネスパートナーを見つけて本格的な海外展開を図ることも容易になります。

 したがって、海外で売りたかったら、まずは、単に「日本のもの」というだけではないプラスアルファの知名度や注目度が必要です。

 例えば、広告もそうですし、お金をかけない方法とすれば、何かの賞を取るとか、情報誌に紹介してもらうとか、街で話題になってテレビに取り上げてもらうというようなことでも良いと思います。

 また、外国で作られている日本旅行者向けの観光ガイドやウェブサイトに掲載してもらうというのも一つの方法です。海外で現地の言語で日本向けの観光情報を掲載している際とは結構ありますので、留学生などにアルバイトでお願いして、そういったものを探してもらい、その運営者に連絡を取って記事提供を申し出てもよいかもしれません。

 さて、このようにして海外向けのEコマースの準備が整ったとして、次に気になるのは法律の問題です。

 

 まず一つ目は、製造物責任法の関係です。いわゆる、商品の欠陥に関する製造者の責任については、各国がそれぞれ独自の製造物責任法を制定して対応しています。もちろん、その国に拠点を置かず、日本にウェブサイトを置いているだけの場合は、基本的には、製造業者に対して色々な規制を貸す意味での製造物責任法の直接的な適用はない場合がほとんどです。ただし、ある特定の国の人の顧客を誘引することが明らかな場合は、その国の法律が適用されるとされる場合があるので、この点は注意が必要です。

 しかし、製造物責任法の観点で最も気を付けたいのは、注意書きです。以前、アメリカで、コーヒーが熱すぎてやけどしたから数十億の賠償を請求されたとか、濡れた猫を乾かすのに電子レンジを使ったら死んでしまったが、電子レンジに猫を入れてはいけないと書いていなかったのでメーカーの責任だと訴えられたといったような事件もあったようです。これらは多少極端ですが、少なくとも普通の人がやりそうなミスも含めて、使用者が使い方を誤ったとしても、なお事故が防げるような安全構造の採用や注意書きの記載は、絶対に不可欠です。特に、日本の文化になじみが薄い外国人は、日本のものを予想外の誤った使い方で使うこともありますので、注意が必要です。この点は、詳細な注意書きを、最低限日本語、英語、中国語では記載し、さらによく売れることが予想される先の国があるならその国の言語でも作っておいて、商品に同梱するようにしておかなければなりません。

 二つ目の問題点は、商標です。

 コストをなるべくかけずに海外進出をするというEコマースの特徴上、ほとんど海外での商標取得を検討していない方が多いように思います。しかし、少なくともサーバーが置いてある国では商標を取っておかないと、誰かが勝手に商標を取ってしまった場合、こちらが商標権侵害で訴えられることになりかねません。また、日本にサーバーがある場合でも、販売が予想される対象国では少なくと商標権を取っておかないと、粗悪の模倣品が出て信用が傷つけられたり、せっかく売れたので本格的に進出しようかと思ったときに自社の名前が使えないという事態になりかねません。

 もっとも、海外では、知的財産に関する法制度が少しずつ違っていたり、ミャンマーのように、そもそもまだ知的財産権関連法が整備されておらず、登録そのものができない国があったり(2014年11月現在)するので、事前に国際出願を取り扱っている事務所にご相談頂くことをお勧めします。

 せっかくの良い商品を広くたくさんの人に知ってもらうためにも、Eコマースは、上手に利用して行きたいものです。

(2015年1月執筆)

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