コラム

COLUMN

アフィリエイト広告やステマも、景品表示法上違法となり得るとして措置命令

企業経営・販売・広告

2021.11.11

執筆者:弁護士・弁理士 田中雅敏

【アフィリエイトによるステルスマーケティング(ステマ)も優良誤認表示として措置命令】

 豊胸効果やダイエット効果、美容効果、健康増進効果などを強調する商品やサービスの広告は多くありますね。

 2021年11月9日、消費者庁は、飲むだけで豊胸効果があるという表示をしていた株式会社アクガレージ及びアシスト株式会社に対して、景品表示法に基づく「措置命令」を出しました。これにより、同社は、自社の商品が優良誤認表示に該当する景品表示法に違反するものであったことを消費者に周知し、再発防止策を講じるなどの命令に従った対応を行う必要があります。

 ところで、このような広告に対する消費者庁の措置命令は、決して珍しいものではなく、ここ数年は、毎年50件程度の措置命令が消費者庁などから出されています。しかし、今回の措置命令で注目すべき点は、いわゆる「ステルスマーケティング」(ステマ)と呼ばれる手法で掲載された表現についても、景品表示法違反と指摘されている点です。

 今回のA社に対する措置命令も、A社が実質的に内容を決めて、モニターなどの個人のSNSに、対象商品を飲むだけで短期間でバストサイズが大幅にアップした、といった内容の体験談を投稿してもらい、これを引用する形で、「「『バスト育ちすぎてヤバい!?』バストアップ&美容ケアのW効果で簡単に巨乳メリハリボディになる裏技解禁!」、「巨乳になっちゃう!?」、「『バストずっと貧乳...』『AAAカップすぎてブラ意味ない!』『身体にメリハリなし!』」、「そんな女子たちが最近話題の方法で『巨乳メリハリボディ』成功者続出しているんです!SNSでもバズッて、モデルやインスタグラマーがバスト激変しまくり!」、「『そんな夢みたいなことある!?』」などといった記載を行ったものです。

 豊胸効果がある、等直接の表示は、個人のSNSアカウントに投稿されているのですが、いわゆるステルスマーケティングの一環として、その内容を実質的に事業者が指示し、それを投稿してもらった上で、これらを「体験談」や、「世の中でバズっている様子」などとして引用する行為全体が、景品表示法の対象となるということを明確にしたとも言えるでしょう。

 今後は、アフィリエイトやインフルエンサーの活用などを行っている販売事業者は、ステルスマーケティングにも景品表示法の適用があることをあらためて認識し、これらについても、適正な表現を行うように注意する必要があると言えます。

【優良誤認に関しては、事業者に「効果がある」ことの合理的な根拠提示義務がある】

 優良誤認が疑われた場合、消費者庁からは、表示の根拠資料を提出するように求められることになります。

 この点については、不実証広告規制という判断基準が用いられており、広告で宣伝された商品の効果や性能について、事業者が消費者庁から根拠資料の提出を求められた後15日以内に根拠資料を提出できない場合は、違法な広告であるとして措置命令の対象になるという扱いになっています。

 また、この「根拠資料」は、「合理的な根拠資料」でなくてはならないとされており、「客観的に実証された内容」のものであることが必要とされています。

 具体的には、以下のようなものが「合理的な資料」に該当するとされています。

 これらの資料を、15日以内に用意することは非常に困難ですので、事業者は、表示を行う際には、こうした「根拠資料」を事前に用意しておくことが重要となります。

(「合理的な資料」に該当するための基準)

(1)提出資料が客観的に実証された内容のものであること

ア)試験・調査によって得られた結果試験・調査の方法

関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法により実施する必要があります。学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法が存在しない場合は、社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施する必要があります。

イ)専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献見解・学術文献の基準

専門家等が客観的に評価した見解又は学術文献で、当該専門分野で一般的に認められているものが求められます。

(2) 表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること

提出資料がそれ自体として客観的に実証された内容のものであることに加え、表示された効果、性能が提出資料によって実証された内容と適切に対応していなければなりません。

【景品表示法の「優良誤認表示」とは?】

最後に、そもそも景品表示法で禁止されている表示とはどのようなものがあるのかを見ていきましょう。

景品表示法においては、不当表示が禁止されています。この不当表示には、「①優良誤認表示」、「②有利誤認表示」、「③その他 誤認される恐れがある表示」の三つがあります。

(1)優良誤認表示とは

 商品・サービスの品質、規格その他の内容についての不当表示がこれに該当します。

 例えば、松坂牛でないのに「松坂牛」と表示して肉を提供する行為や、温泉ではないのに「温泉」と表示して宿泊サイトに掲載する行為、さらにはダイエット効果があることが証明されていないのに「1週間で2キロ減量」といった表示をする行為などがこれに該当します。

(2)有利誤認表示とは

 商品・サービスの価格その他取引条件についての不当表示がこれに該当します。「優良誤認表示」が、提供する商品やサービスそのものの内容や性能、品質等に関する誤認表示であるのに対し、「有利誤認表示」は、商品やサービスの提供方法や条件等に関する誤認表示であると言えます。

例えば、「期間限定で半額」と表示しながら実際はいつも「半額」の値段で販売していた問うような場合や、「購入者の中から抽選で10名様にゲーム機をプレゼント!」と表示していたのに、実際には2台しかプレゼントは用意されていなかった、といったような場合がこれに該当します。

(3)その他 誤認される恐れがある表示とは

 その他、特に規制の必要があるとして内閣総理大臣が6類型を定めています。

お得な商品をチラシに載せておいて店頭に顧客を誘導するにもかかわらず、その商品は最初から用意されておらず、「売り切れました」と言って別の商品を購入させるような場合(いわゆる「おとり広告」)などが、これに該当します。

(内閣総理大臣が定める6類型)

①無果汁の清涼飲料水等についての表示

②商品の原産国に関する不当な表示

③消費者信用の融資費用に関する不当な表示

④不動産のおとり広告に関する表示

⑤おとり広告に関する表示

⑥有料老人ホームに関する不当な表示

  • 東京、福岡、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、ハノイ、ダナンの世界8拠点から、各分野の専門の弁護士や弁理士が、企業法務や投資に役立つ情報をお届けしています。
  • 本原稿は、過去に執筆した時点での法律や判例に基づいておりますので、その後法令や判例が変更されたものがあります。記事内容の現時点での法的正確性は保証されておりませんのでご注意ください。

お問い合わせ・法律相談の
ご予約はこちら

お問い合わせ・ご相談フォーム矢印

お電話のお問い合わせも受け付けております。

一覧に戻る

ページの先頭へ戻る