早崎裕子

Q1.自己紹介も含めて、入所までのキャリアを教えてください。

 私は2000年10月に検察官に任官し、以後、11年半、検察庁で捜査・公判に従事するほか、法務局で訟務検事として勤務していました。元々、弁護士になることは全く考えていなかったのですが、訟務検事として行政訴訟に従事した経験から、民事訴訟の面白さも感じるようになりました。また、任官6年目で長男を出産した後、検察庁には、勤務地にご配慮いただいていたのですが、検察官として勤務する以上、やはり全国転勤は避けられないため、長男が小学校に進学するのを機に、弁護士に転向することにしました。

Q2.移籍先として当事務所を選んだ理由を教えてください。

 元々福岡市の出身ですし、近所に住む両親に子育てを手伝ってもらう前提でしたので、福岡市内の事務所への就職しか考えていませんでした。ただ、私が弁護士に転向した2012年は、かなりの就職難で、「ヤメ検・子持ち・中年女」の中途採用を希望する事務所はなく、「即独」を勧められることも多くありました。
 しかし、家事・育児と仕事を両立させた上、事務所の運営まで考える精神的余裕はなかったので、どこかの法律事務所に勤務したいと考えていました。このため、弁護士会に新人採用予定がある事務所を照会し、「新卒採用予定があるなら、試しに面接を実施してもらえないか。」と売り込みをかけることにしました。
 当事務所には知り合いの弁護士はなかったのですが、当時はまだ設立間もない頃で、猫の手も借りたいほど忙しかったため、採用に至ったと思われます。
 面接時には、「とても忙しいけど、大丈夫ですか?」と何度も念押しをされましたが、検察官時代にかなりハードに仕事をこなしていましたので、忙しさは全く気にしていませんでした。また、代表の田中弁護士は、年齢や期が近くて親しみやすく、話題が豊富でしたので、何となく、この事務所は面白くなりそうだと思いました。
 以後、他の弁護士事務所に勤務した経験はないので、よそのことは全く分かりませんが、諸々の面で、検察庁よりはいいような気がします(笑)。
 ちなみに、私は当事務所に入所後、わずか1年10カ月で任期付公務員として再び訟務検事に任官しました。元々訟務検事の仕事が好きで、機会があれば再度訟務検事として勤務したいという思いがあり、就職後間もない時期でしたが、「必ず事務所に帰る」という口約束で2年半の間、任期付公務員に快く送り出してもらい、また、任期終了後は、口約束のとおりに復職させてもらいました。
 にもかかわらず、何と事務所に復帰した直後に10年半ぶりに次男を妊娠・出産したのですが、高齢出産の身を考慮して、しっかり育休をいただき、育休期間中は定期的に紙おむつをプレゼントしてもらいました。復帰後は激務で、すっかり当時のことを忘れていましたが、こうやって思い返すとやはりいい事務所ですね(笑)。  

Q3.入所前と入所後で、印象が変わったことはありますか。

 元々弁護士事務所に抱いていたイメージというのがないのですが、当事務所は事務局の皆さんが検察事務官に負けず劣らず責任感が強く、優秀で日々助かっています。
 また、年齢の近い女性弁護士も多いので、時折、女性弁護士だけで飲みに行ったりしています。事件は基本的にチームを組んで対応することになっていますし、事務所旅行などのイベントもありますので、他の弁護士や事務局と親しくなる機会は多いのではないかと思います。

Q4.事務所ではどんな業務をされていますか。

 検察官として勤務した経験から、当事者とのやり取り、証拠の精査、事件の見立てなどは得意な方ではないかと思います。また、多数の行政訴訟を経験し、複雑な案件や長い準備書面の起案にも慣れていますので、紛争・訴訟案件を中心に対応しています。
 その他、内部統制への対応、研修講師なども行っています。ジャンルを問わず、急ぎの案件や複雑な案件で呼ばれることが多いですが、頼りにされるのはありがたいことだと思っています(笑)。

Q5.どんなことを意識して仕事に取り組んでいますか。今後の展望などもございましたら教えてください。

 公務員時代は、勤務時間や仕事の内容、仕事の進め方に制限があったのに対し、弁護士の仕事は、やり方に柔軟性がありますし、決裁を取る手間もなく、判断が個人に任されるという点では、とても自由に仕事をすることができますし、検察官よりも子育てとの両立はしやすいです。
 しかし、その一方で、弁護士は、大きな事務所に所属していたとしても、個人の責任が極めて重大ですし、お役所と違って業務のスピードが重視されるのに、業務の範囲は無限ですので、毎日たくさんの勉強をしなければなりません。
 このため、弁護士が求められる仕事の質・量は、検察官よりも厳しいのではないかと思いますが、日々社会の新しい事象に直面することは楽しみでもありますし、法律という特殊な世界への知的興味は尽きません。事件処理には大きなプレッシャーが伴いますが、重い責任があるからこそやりがいがあると思い、何でも面白がって取り組むように務めています。
 法曹としてのキャリアはあっという間に23年が過ぎましたが、改めて毎日の積み重ねが非常に大事だと思います。これからも初心を忘れずに、目の前の案件に真摯に取り組んでいきたいと考えています。

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