著作権及び著作者隣接権
(9)著作権
ベトナムにおける著作物は内容、品質、形態、手法や言語を問わないものの、模写などではなく作成者により創作的に表現されたものを指し、無方式で発生する点に特徴があります(法6条1項、14条3項)。創作性を欠く場合としては、例えば、工程、システム、操作法、定義、原理や統計などが挙げられます(法15条3項)。ただし、科学的な研究の成果として操作法や定義を行った場合は著作物として保護が及ぶ余地があります。著作物該当性に関する具体的判断基準は明記されていませんが、講演やプレゼンテーション、音楽や建築、美術作品(応用美術含む。)などは著作物の対象となり得ると考えられます。もっとも、著作権の任意による登録制度も用意されており(法49条1項及び2項)、著作権証明書発行に合わせて、著作物性の判断結果を知る契機となる点に利便性があります。なお、2019年においては7392件の証明書が発行されています。
著作物の創作者たる著作権者には、著作権及び著作者人格権が認められることとなります。
著作権の内容は二次的著作物の創作、公衆への実演、複製、著作物又は複製物の頒布、優先又は無線の方法による、技術的手段を利用した公衆への伝達、映画の著作物又はコンピューター・プログラムの原本又は複製物を貸与する権利(法20条)で構成されます。
著作者人格権は題号指定権、氏名表示権、公表権、同一性保持権(法19条)などが認められています。公表権を除けば、これら著作者人格権は無期限に保護されます。公表権及び著作権については原則として著作者の死後50年保護が及びます。保護期間の例外として、映画、写真、美術、匿名の著作物については公表から75年保護が及び、匿名の著作物を除くその他著作物については25年以内の公表がない場合は固定から100年保護が及びます。
(10)著作者隣接権
著作者隣接権は、実演、録音、録画、放送番号、暗号化された番組を送信する衛星信号に係る組織又は個人の権利と定義され(法4条3項)、実演者の権利(法29条)、レコード制作者の権利(法30条)、放送組織の権利(法31条)が著作者隣接権の節に定められています。このような隣接権はこれら衛星信号が著作権を害することなく固定された時点で発生するとされています(法6条2項)。
著作者隣接権の保護期間は50年間ですが、それぞれ起算点が異なっています。実演家の場合は、実演固定時を起算点とし、レコード制作者の場合はレコード公表又は公表されていない場合は固定時を起算点とし、放送組織の場合は放送後を起算点としています(法34条)
3.植物品種権
植物品種権として法的保護が及ぶのは、育成され、又は発見及び開発された品種かつ農業地方開発省が発行する保護対象種の一覧に属する品種であって、新規性、識別性、均一性、安定性及び適正名称を有するものとされています(法158条)。
このような品種のうち、樹木及びつる植物には25年間、その他の品種には20年間の保護が登録日を起算点として与えられますが、更新は認められていません(法169条2項)。
4.侵害対応
侵害への対応については、行政対応と司法対応とに大きく分かれ、行政対応においては、税関を除けば、監査機関、警察庁、市場管理局や人民委員会がこれを管轄しています。これら機関は必要に応じて保全措置を講じ、行政罰などの行政処分を行うことになります。輸出入の場面においては税関がこれを管轄し、知的財産権国境管理措置が講じられます(法200条)。司法対応においては、民事上又は刑事上の責任追及を行うこととなり、民事上においては賠償請求をはじめとして侵害物の廃棄など侵害停止措置(法202条)などの請求を求めることになります。もっとも民事司法上の対応については2006年から10年間の間で168件が受理されたにとどまり、活発な活用実態があるとは必ずしも言い切れない点が指摘できます。
(2020年5月)
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