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コラム

COLUMN

ベトナムにおけるバーチャル総会の開催について

一般企業法務等

2022.09.09

執筆者:弁護士 布井 千博

 毎年6 月は、日本では株主総会の季節です。コロナ禍の影響で、デジタル化が遅れていた日本でも様々なことがデジタル化されてきました。株主総会もその一つで、リアルに開催されている株主総会に株主がオンライン上で参加するハイブリッド総会だけではなく、リアルの総会を開催せずに完全にオンライン上だけで総会を開催することが可能になりました。完全にオンラインで開催する形式の株主総会を、日本では「場所の定めのない株主総会」あるいは「バーチャルオンリー総会」と呼んでいます。もっとも、このようなバーチャルオンリー総会を開催するためには、上場会社が経済産業大臣と法務大臣の確認を受けて、株主総会を場所の定めのない株主総会とすることができる旨を定款で定めることが必要です(産業競争力強化法66 条)。

 ところで、ベトナムでは、このようハイブリッド総会とバーチャルオンリー総会を含むバーチャル総会の開催は、コロナ禍以前から認められてきました。2014 年に改正された企業法は、有限責任会社と株式会社の総会について、総会場における議決や書面投票の方法のほかに、定款で定める他の方法で決議を行うことができると定めたうえで、オンライン会議,電子投票又はその他の電子的形式を通じて総会に参加し,議決することができるとしました(2014年企業法60条、140条)。この規定は、2020 年に改正された企業法にも引き継がれています(2020年企業法144 条)。
 上記の企業法の規定に基づいて、ベトナムでは、コロナ禍の2020年以降、上場企業をはじめ多くの企業でハイブリッド総会やバーチャルオンリー総会が開催されています。また、このようなバーチャル総会の開催のために、バーチャル総会の開催に関する定款変更だけではなく、バーチャル総会に関する社内規則も策定されています。このような社内規則を見ると、ハイブリッド総会とバーチャルオンリー総会に関する条項や、バーチャル総会開催の詳細な手順を規定する条項、通信障害が生じた場合の措置を規定する条項など、詳細な実施細則が設けられています。
 有限責任会社においても、バーチャル総会の開催は可能です。バーチャル総会を実施するために定款変更が必要かについて条文上は必ずしも明白ではありませんが、念のために定款でバーチャル総会を総会開催形式の一つとしておくことが妥当でしょう。社員の数が少ない有限会社においては、バーチャル総会実施のために詳細な規程は必要ありませんが、通信障害などが発生した場合に備えて、手順や総会延期に関する取り決めをすることは必要と思われます。

 今年の夏は、日越間の国境封鎖も解除され、再び往来が戻ってくることが期待されます。社員総会や株主総会の機会をとらえて久しぶりに渡越することも悪くないでしょう。それでも、いったん慣れ親しんだ遠隔会議の方式を今後も活用するためにも、バーチャル総会の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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