コラム

COLUMN

改正景品表示法施行(2024年10月1日)

企業経営・販売・広告

2024.09.10

執筆者:弁護士・弁理士 田中雅敏

1.景品表示法の改正

 2024年(令和6年)10月1日から、改正景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律・令和5年法律第29号)が施行されます。
 広告表現などで、ついつい大げさにしたり明確な根拠がない記載をしてしまい、景品表示法違反で摘発され、措置命令などがなされるケースが増えています。
 2024年度(4月以降)だけでも、現在までに、RIZAP株式会社、富士通クライアントコンピューティング株式会社、株式会社キャリカレ、医療法人社団祐真会、中国電力株式会社、株式会社那覇直葬センターなど、多くの企業に対して措置命令や課徴金納付命令がなされています。
 景品表示法違反に対する行政や社会からの目は、年々厳しくなっており、BtoCのビジネスを営むすべての企業において、注意や適切な予防体制の構築が不可欠です。

2.2024年度の景品表示法違反の事例(抜粋

(1)  RIZAP株式会社

 RIZAP株式会社が運営する「chocoZAP」において、提供するセルフケアサービスに関し、自社ウェブサイトやSNS上で「24時間使い放題」と宣伝したものの、実際には特定のサービスの利用時間が制限されており、24時間いつでも利用可能ではありませんでした。また、第三者に依頼してInstagramに投稿させた内容を、広告であることを明示せずに掲載しており、ステルスマーケティングに該当しました。
 消費者庁は、同社に対し、違反内容の公表と再発防止策の徹底、さらに今後の同様の表示を行わないことなどを求める措置命令を行いました。

(2) 富士通クライアントコンピューティング株式会社

 富士通クライアントコンピューティング株式会社は、同社が供給するノートパソコンの広告において、「WEB価格」と「キャンペーン価格」を表示しました。しかし、「WEB価格」として表示されていた価格は、実際にはそのウェブサイト上で販売された実績がない価格であり、消費者に通常価格よりも割安なキャンペーン価格で購入できると誤認させる二重価格表示を行っていました。また、表示されたキャンペーン期間を過ぎても、同じ割引価格で販売を続けており、これも誤解を招く広告表示に該当するとされました。
 消費者庁は、これらの表示に関し、計4,223万円の課徴金の支払いを命じ、今後同様の違反行為を行わないよう是正措置を行うことなどを内容とする措置命令を行いました。

(3) 株式会社キャリカレ

 株式会社キャリカレは、消費者に対して誤認させる広告表示を行いました。同社は、提供する講座について「100%合格保証」や「全額返金保証」といった表示をしていましたが、実際には条件が存在し、全ての受講者が該当するものではありませんでした。このような誤解を招く表現により、消費者に対して不適切な期待を与える広告表示であるとされました。
 消費者庁は、これらの表示に関し、同社に対し、違反行為の是正、誤解を招く表示の削除および再発防止策を講じることなどを内容とする措置命令を出しました。

(4) 株式会社那覇直葬センター

 株式会社那覇直葬センターは、同社が提供する「直葬プラン」および「火葬プラン」に関して、新聞折込チラシや自社ウェブサイトにおいて、遺体の個別面会室や供花に追加料金が発生しないかのように表示していましたが、実際にはこれらのサービスには別途料金が必要でした。また、「通常価格」として180,000円(税込)と表示されていた価格は、実際にはそのような価格で提供された実績がありませんでした。
 消費者庁は、同社に対し、景品表示法第5条第2号に違反する不当表示があったと認定し、違反事実の公表・周知と再発防止策の徹底、そして今後同様の表示を行わないことなどを内容とする措置命令がなされました。

3.主な改正点

 今回の改正点は、主に以下の三点です。

(1) 確約手続きの導入

 改正法では、新たに「確約手続き」が導入されました。これにより、事業者が違反を自主的に是正する意思を示し、具体的な改善計画を提出することで、措置命令や課徴金の適用を免れる可能性が出てきました。この手続きの導入により、企業は罰則を回避しつつ迅速に問題を解決できる手段が提供されることになります。

(2) 課徴金制度の強化

 課徴金の算定方法にも改正が加えられ、違反行為の売上高を推定して課徴金を算出することが可能になりました。さらに、過去10年以内に課徴金命令を受けた企業に対しては、課徴金の額を1.5倍に増額する規定も新設されています。また、悪質な違反行為に対しては、100万円以下の罰金が課せられる直罰規定も導入され、企業に対する抑止力が強化されています。

(3) 有利誤認表示への対応

 消費者に「お得」と誤認させるような表示、特に価格や取引条件に関する有利誤認表示も改正法では厳しく取り締まられることになりました。企業が価格表示や商品の優位性をアピールする場合、消費者に実際よりも有利であると誤解させる表示は厳しく規制されます。これにより、消費者が正確な情報に基づいて商品を選択できる環境が整備されます。

4.企業の準備事項

 消費者向けに商品やサービスを提供する企業は、以下のような準備をしておくことが必要です。

(1) 表示内容の根拠の確保

 有利誤認表示が規制されるため、商品の優位性や価格に関する表示は、合理的な根拠を持って裏付ける必要があります。根拠の提出が求められたときに、速やかに対応できるように、広告表示を作成する時点で、その根拠(エビデンス)を確保し、保存しておくことが望まれます。

(2) 表示内容のチェック体制の構築

 課徴金制度が強化されたことに伴い、今後は、違反企業について、高額の課徴金が課せられる可能性が高まりました。これらのリスクを回避するためには、広告表示等について、景品表示法の観点から適切なチェックを行う体制を社内で確立するとともに、判断が微妙な事例などについては、適切なタイミングで弁護士等に相談することができる仕組みを構築しておくことが望まれます。

(3) 自主的な是正体制の整備

 確約手続きを活用し、問題が発生した場合でも速やかに対応できる体制を構築することが求められます。問題が発生した場合の初期対応がスムーズにできるよう、日ごろから体制整備や準備を行っておきましょう。

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