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コラム

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裁判員裁判制度~ある日、あなたが裁判員に選ばれたら~

一般企業法務等

2021.07.16

 2009年5月に刑事裁判に市民感覚を取り入れることを目的とした裁判員制度が導入されてから6年が経過しました。この間、新聞やニュースで報道されることも多く、裁判員という言葉をご存じの方も多いかと思います。今回は、もしあなたが裁判員に選ばれたら、どんなことを行うのか、ご紹介したいと思います。

 裁判員候補者は、選挙人名簿から作成された裁判員候補者名簿から無作為に選ばれ、裁判所からの呼出状を受け取ります。呼び出された裁判員候補者は、裁判員選任手続で、裁判員になれない事由が無いか質問を受けます。辞退を希望する方は、裁判官にその事情を伝えて、裁判官が辞退を認めるかを判断します。この選任手続で、原則6名の裁判員が選ばれ、裁判官3人とともに事件を審理していくことになります。

 裁判員裁判の対象事件は、殺人罪、強盗致傷罪、現住建造物等放火罪など、重大な犯罪の疑いで起訴された事件です。裁判員は連日審理に参加し、判決が下されるまでの期間はおおむね4、5日と言われています。オウム事件などの様に、10年以上かかった従来の刑事裁判と比べると、期間がとても短いと思われるでしょう。その理由は、裁判員裁判の前に、裁判官・検察官・弁護人が、公判前整理手続という手続で事件の争点を整理し、審理の予定を立てているからです。刑事事件では、様々な争点が考えられます。例えば、起訴された被告人が真犯人と同一人物か、被告人のアリバイは認められるか、殺意はあったか否か、などです。従来の刑事裁判では、五月雨式に考えられる争点が検察官、弁護人の間で争われ、裁判が長期化したと言われています。従来の刑事裁判の反省から、公判前整理手続では、検察官の手持ち証拠が弁護人により多く開示され、事前に争点と証拠が十分に絞られることになりました。

 このように、裁判員裁判において裁判員が審理する内容は、「被告人のアリバイが証拠A、証拠Bから認められるか」という様に、本当に重要な争点に限定されています。さらに審理では、検察官・弁護人が行う説明は、法廷で直接見て聞いて裁判員が理解できるよう、難解な法律用語を用いない等のプレゼンテーション上の工夫がされています。

 公判審理終了後、裁判員と裁判官は個室で、争点つまり被告人が有罪か無罪か、有罪の場合にどの程度の刑罰を科すか、執行猶予をつけるかを議論します(これを評議と言います。)。評議には、検察官や弁護士も立ち会うことができません。例外的に、司法試験に合格し、弁護士や検察官になる前の研修生である司法修習生には傍聴が許されることがあります。私も司法修習生のときに一度だけ傍聴しました。この評議では、裁判官が裁判員に刑事裁判手続や法律解釈についてアドバイスしながら、裁判員が各自の意見を述べ争点等について議論します。評議は、全員一致をめざして議論しますが、どうしても全員一致に至らないときは多数決による評決が行われます。そして、裁判員立会いの下、裁判長が被告人に判決を宣告し、裁判員の任務が終了します。

 制度施行から6年が経過した裁判員裁判ですが、いくつかの問題点も指摘されています。たとえば、裁判員の負担軽減を過度に重視しすぎ、争点を限定し証拠調べの時間を削りすぎたことで、かえって裁判員に事件の全体像が分かりにくくなってしまい誤判を招くのではないか。専門家ではない一般市民である裁判員が、数日間の審理で死刑判決を宣告するか重い判断を迫られる可能性があり、裁判員には非常に酷ではないか。裁判員裁判自体の期間は短縮化されたものの、公判前整理手続に期間がかかりすぎ、被告人にとっては従来裁判よりもトータルの身体拘束期間が延びている、といった点は、特に大きな問題だと指摘されています。

(2015年7月執筆)

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