コラム

COLUMN

民法の成年年齢の引き下げについて

一般企業法務等

2022.04.05

執筆者:弁護士 早崎裕子

 日本は長らく成年年齢を20歳とし、法律上、20歳を大人と子どもの分岐点としていましたが、憲法改正手続を定めた平成19年5月の国民投票法制定の際に、「日本国民で年齢満18歳以上の者は国民投票の投票権を有する。」と明記されたことに伴い、成年年齢を改正する機運が高まりました。そして、平成27年6月の公職選挙法が改正された際、選挙権年齢を18歳以上とすることが定められ、平成28年7月の参議院議員選挙から、18歳以上の日本国民に選挙権が与えられることになりました。

 そして、2022年4月1日からは、「民法の一部を改正する法律」が施行され、民法上も成年年齢が18歳に引き下げられることになります。その結果、2022年4月1日の時点で18歳以上20歳未満の者(2002年4月2日から2004年4月1日生まれまでの者)は、その日(4月1日)に成年に達することとなり、2004年4月2日生まれ以降の者は、18歳の誕生日を迎えたときに成年に達することになります。

 ですので、今年の4月1日は、成年年齢が一気に増加することになります。

 民法上、成年年齢とは①1人で有効な契約を締結することできる、②父母の親権に服さなくなる、という意味があります。

 これまでは18歳、19歳の未成年者は、1人で携帯電話を購入したり、アパートを借りたり、クレジットカードを作成したりすることができませんでしたが、今後は、18以上の者は1人で契約を締結することが可能となります(ただし、2022年4月1日より前に18歳、19歳の者が親の同意を得ずに締結した契約は、法改正後も引き続き取り消すことが可能とされています。)。

 また、どこで生活するか(住所の決定)、進学先、就職先についても、今後は、子どもの意思で決定することが可能となります。

 ただし、養育費については、「子が成年に達するまで」との取り決めがされていた場合、法改正により自動的に18歳に引き下げられることはなく、従前どおり20歳までとされます。

 また、今回の法改正に伴い、従前は、男性は18歳、女性は16歳から結婚が可能とされていたのが、2022年4月1日からは、女性の婚姻開始年齢も18歳からに引き上げられました。これは近年高校等の進学率が98%を超えていることを踏まえ、婚姻をするには、少なくとも18歳程度の社会的・経済的成熟が必要との考えに基づくものです(ただし、2022年4月1日の時点で既に16歳以上の女性は、引き続き18歳未満でも結婚することができます。)。

 もっとも、民法の成年年齢が引き下げられたとしても、お酒やタバコの年齢制限や、公営ギャンブル(競馬、競輪、オートレース、競艇)の年齢制限は従前どおり、20歳のまま維持されます。

 なお、これまで多くの自治体では、1月の成人の日の頃に成人式を開催する扱いとなっていましたが、成年年齢が18歳以上となることで、大学受験等と時期が重なることになるため、民法の成年年齢と併せて、これまでどおりの時期に成人式を開催するかは今後の課題となりそうです。

 人生100年時代となりましたが、法律上は早く大人になることが求められているというわけです。ずっと以前に大人になった私たちは、後輩たちにしっかりと大人の手本を示さなければなりませんね。

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