執筆者:弁護士 髙崎慎太郎
1 改正公益通報者保護法が2022年6月までに施行されます。
公益通報者保護法が施行されて以降も、企業不祥事、通報者に対する不利益な取扱いは後を絶ちません。
今般の改正は、①事業者自ら不正を是正しやすくするとともに、安心して通報を行いやすくすること、②行政機関等への通報を行いやすくすること、③通報者がより保護されやすくすることで、公益通報者保護制度の実効性を向上させることを目的としています。
2 ①として、公益通報の受付、調査及び是正に必要な措置を行う業務に従事する者(公益通報対応業務従事者)を定めること(11条1項)、及び、内部公益通報に適切に対応する体制の整備その他の必要な措置をとること(同条2項)が事業者の義務とされました。なお、従業員数300人以下の事業者においては、これらは努力義務とされています。
これらの義務に係る措置の内容については、消費者庁による指針及び指針の解説(以下併せて「指針等」といいます)が一定の基準を示しており、これらに沿った措置を講じていない場合、報告徴求、助言、指導又は勧告・公表といった行政措置(15条、16条)の対象となりうるため、事業者はこれらに沿った措置を講じる必要があると考えられます。
指針等は、内部公益通報に適切に対応する体制の整備その他の必要な措置(11条2項)に関し、(ⅰ)部門横断的な公益通報対応業務を行う体制の整備として、内部公益通報受付窓口を設置すること、組織の長その他幹部に関係する事案についてはこれらの者からの独立性を確保する措置をとること、通報対象事案に関係する者を公益通報対応業務に関与させない措置をとること等を求めています。また、(ⅱ)公益通報者を保護する体制の整備として、通報者に対する不利益な取扱いを防止するための措置をとること等を求めています。さらに、(ⅲ)内部公益通報対応体制を実効的に機能させるための措置として、役職員に対し法令及び内部公益通報対応体制について周知・教育を行うことや、内部公益通報への対応に関する記録を作成し保管すること、内部公益通報対応体制を定期的に評価・点検し、必要に応じて改善を行うこと、及び指針等で求められる事項を内部規程で定め、この規程を運用すること等を求めています。
また、公益通報対応業務従事者は、通報者を特定させる情報を正当な理由なく漏らしてはならない守秘義務を負い、これに違反した場合には罰金という刑事罰が科されます(12条、21条)。
3 ②として、行政機関やマスコミ等に通報したことによる不利益な取扱いから通報者が保護される場合が拡大されました(3条2号、3号)。
また、③として、通報者の範囲及び通報対象が拡大されるとともに(2条1項、同条3項1号)、通報者が保護される内容として、解雇等の不利益な取扱いだけでなく、事業者が通報者に損害賠償請求を行うことも禁止されることになりました(7条)。
4 改正法は、事業者に積極的な対応を求め、また違反に対する刑事罰が定められるなど、実務に大きな影響を与える内容となっています。企業においては、施行までに、実効的な内部通報体制となっているか、従前の体制の点検及び必要な整備を行う必要があります。
当事務所では、内部通報体制整備のサポートのほか、内部通報制度の運用支援を行っています。ぜひお気軽にご相談ください。 ※条項は改正法のものを指します。
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