コラム

COLUMN

外為法の改正について

一般企業法務等

2021.08.04

外国投資家が行う対内直接投資等への規制に関連して、外国為替及び外国貿易法(以下「外為法」と表記します。)が改正されました。対内直接投資等への規制方法としては、対象となる株式等の取得についての事前届出と事後報告があります。今回の改正のポイントとなる対内直接投資等と事前届出免除制度について説明します。

●対内直接投資等の定義に関する改正

 対内直接投資等の定義は、外為法第26条第2項の第1号から7号に規定されており、同項第3号では、上場会社等の株式の取得がこれに該当するとされています。改正前は、同号に該当するのは取得後の株式数がいわゆる密接関係者と合算して10%以上となる場合とされていました。これが改正により、1%以上の場合に対内直接投資等に該当することとなりました。

 また、同項第4号では、会社の事業目的の実質的な変更に関し行う同意が対内直接投資等に該当すると規定されていますが、かかる同意に加え、会社の経営に重要な影響を与える事項として政令で定めるものに関し行う同意も追加されました(第7号)。具体的には、外国投資家又はその関係者の取締役又は監査役への選任議案、事業の全部譲渡に係る議案、吸収合併に係る議案、会社の解散に係る議案などが規定されています。なお、対内直接投資等への該当性は密接関係者との合算において、事業目的の実質的な変更に関し行う同意は3分の1、新設された経営に重要な影響を与える事項への同意は1%の総議決権を有する場合に限られています。

 その他、外国投資家が国内居住者法人から事業を譲受け、吸収分割及び合併により事業を承継する場合が追加されました。

●対内直接投資等における届出免除制度の新設

 対内直接投資等への該当性が拡大される一方、対内直接投資等へ該当する場合の一部について事前届出が特例として不要となる事前届出免除制度が新設されました。

事前届出免除の特例は、概ね外為法違反歴がなく国有企業等に該当しない外国投資家が行う対内直接投資等のうち(同意行為や事業承継は除かれています。)、国の安全性等に係る財務大臣及び事業所管大臣が定める基準を遵守する場合に認められるとされています。さらに事前届出免除制度は、証券会社、銀行、保険会社などの外国金融機関に対する包括免除と、それ以外の外国投資家のうち外為法違反歴がなく国有企業等に該当しない全ての投資家が利用できる一般免除に区分されています。又、事前届出免除制度を利用するために遵守すべき基準は、外国投資家自ら又はその密接関係者が役員に就任しないこと、指定業種に属する事業の譲渡・廃止を株主総会に自ら提案しないこと、指定業種に属する事業に係る非公開の技術情報にアクセスしないこととされています。

 包括免除の場合は、対象銘柄とは無関係に、事前届出が包括的に免除されることとなります。一般免除の場合は、指定業種のうち、国が特に安全面から指定した業種(コア業種)に該当しないものについては事前届出が不要となり、コア業種については上乗せ基準を遵守した場合に10%未満の株式取得について事前届出が免除されることとなります。例えば、武器分野は全てコア業種として指定され、電力業では最大出力5万kw以上の発電所を有する発電事業者などがコア業種として指定されています。

 この改正に伴い、外国投資家が日本への投資を検討する際に、事前審査の要否や届出免除制度の利用に関する正確な判断を行い、本改正を通じたより円滑な投資活動へと繋げる体制を構築していくことが望まれます。

(2020年7月)

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