執筆者:弁護士 鈴木萌
日本の水際対策が緩和され、日本に外国人労働者を呼びたいとの需要が高まっていますが、外国人労働者を日本に呼ぶ際に選択肢に挙がることが多い在留資格の1つが「企業内転勤」です。
企業内転勤は、「本邦に本店、支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行う入管法別表第一の二の表の技術・人文知識・国際業務の項に掲げる活動」を行う場合の在留資格で、要するに、日本に本店・支店・事業所等がある企業の内部や企業グループ内の転勤で、かつ転勤後の業務内容が比較的高度なホワイトカラーに該当するような場合に対応しています。
この「企業内転勤」の在留資格を取得するためには、
- 申請に係る転勤の直前に、
- 外国にある本店、支店その他の事業所において
- 法別表第一の二の表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる業務に従事している場合で、
- 3の期間が継続して1年以上あること
- 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること
のいずれにも該当することが必要になります。
したがって基本的に、その労働者が、外国にある支店や関連会社等で、「技術・人文知識・国際業務」に該当するような業務(例えば、エンジニア、デザイナー、通訳、語学教師等)に1年以上従事している場合で、転勤後もその業務に従事する場合には、報酬額に気を付けることで、企業内転勤の在留資格の取得が可能です。
なお、ホワイトカラーの労働者を日本に呼ぶ場合には、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格(「技人国ビザ」)も選択肢に入ってきますが、技人国ビザの場合は、業務内容に応じて一定の学歴・実務要件が必要とされますので、この点で、企業内転勤の在留資格の方が、ハードルは低いと言えます。
ただし、技人国ビザですと、転職して勤務先が変わった場合でも維持が可能ですので、労働者側にとっては、こちらの方が使い勝手が良い場合が多いです。また、企業内転勤の在留資格の場合は、あくまで転勤であることが前提となりますので、原則として、取得にあたって期間を定めることが必要となります。そのため、初めから期間無制限で日本に呼びたい場合には、技人国ビザを利用するのが適当ということになります。
上記のように、企業内転勤と技人国のいずれを利用するかは、呼び寄せたい人の属性、業務内容等を踏まえて、検討する必要がありますので、ご注意ください。
また、「技術・人文知識・国際業務」に該当しない業務に就いている労働者(多くの場合、いわゆるブルーカラーの労働者)を日本に呼びたい場合には、企業内転勤の在留資格を利用することはできません。この場合には、「技能実習」、「特定技能」といった在留資格の選択肢がありますが、いずれも多くの要件をクリアする必要があったり、手続が複雑だったりするため、企業内転勤の在留資格よりもかなりハードルが高くなります。
企業内転勤の在留資格を満たさない労働者の日本への異動は、一筋縄ではいかないとご理解ください。
外国から日本への異動をお考えの場合には、計画の段階から在留資格の点を意識していただくと、スムーズに進みやすくなりますので、そのようにされることをおすすめいたします!
- 東京、福岡、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、ハノイ、ダナンの世界8拠点から、各分野の専門の弁護士や弁理士が、企業法務や投資に役立つ情報をお届けしています。
- 本原稿は、過去に執筆した時点での法律や判例に基づいておりますので、その後法令や判例が変更されたものがあります。記事内容の現時点での法的正確性は保証されておりませんのでご注意ください。