コラム

COLUMN

同一労働同一賃金 最高裁判決の判断

人事労務

2021.08.03

1 2020年4月1日から、いわゆる同一労働同一賃金を定める改正パートタイム・有期雇用労働法が施行された(※中小企業については2021年4月1日施行)ことは皆さまご承知のことと思います。

この同一労働同一賃金について、2020年に3つの注目すべき最高裁判決が出されました。いずれも、実務上必要な対応がより明確化された判決といえるものです。本稿ではこの最高裁判決についてご説明させていただきます。

2 パートタイム・有期雇用労働法は、同一企業内において、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について、次の二つの点から、不合理な差別的取り扱いを禁止しています。

■「均衡待遇」(不合理な待遇差の禁止)(改正法8条) 

 ①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲、③その他の事情の内容を考慮して不合理な待遇差を禁止

■ 「均等待遇」(差別的取扱いの禁止)(改正法9条) 

 ①職務内容 、②職務内容・配置の変更範囲が同じ場合は、差別的取扱い禁止

※ 「職務内容」とは、業務の内容+責任の程度をいいます。

この内、特に「均衡待遇」については、どのような場合に待遇差が「不合理」と判断されるかが、法令の文言だけでは明確ではなく、裁判においてどのような判断がなされるか注目されていました。

この点について、3つの最高裁判決では、それぞれ各種手当、休暇、賞与、退職金について、不合理な待遇差についての判断を示しました。

3 最高裁判決について

次の表にまとめているとおり、最高裁判所は、日本郵便事件(最高裁令和2年10月15日判決)において、各種手当と休暇については、それぞれの趣旨が、契約社員に対しても妥当するとして、これらを契約社員に対して付与しない待遇差を不合理と判断しました。

他方、賞与(大阪医科薬科大学事件)及び退職金(メトロコマース事件)については、上述した①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲に「一定の相違がある」と指摘し、また、③その他の事情として、正社員への登用制度があることなどを指摘し、契約社員・アルバイト社員に対して賞与・退職金を支給しない待遇差は不合理ではないと判断しました。 

4 今後必要となる対応

これらの最高裁判決は、事例判決(その事案について判断しただけで、一般的なルールを宣言したわけではない)ですので、ケースによっては、これらの最高裁判決とは異なる結論となることもあり得ます。

しかしながら、最高裁判所が考慮した事情を詳細に見てみると、この判断は多くの企業に妥当すると考えられます。

多くの企業の皆様から同一労働同一賃金への対応が難しいとのご相談をいただいておりましたが、今回の最高裁判決を踏まえると、まずは、各種手当や休暇制度の見直しに優先的に着手していただく必要があると言えそうです。他方、賞与及び退職金制度については、直ちに正社員と同様の制度を目指す必要はないかもしれず、まずは、正社員への登用制度を導入するなどの対応から検討を開始するとよいかもしれません。

(2021年1月)

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