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コラム

COLUMN

公益通報者保護とパワハラ防止義務を同時に解決する【法務担当者の負担減Tips】

人事労務

2021.09.07

執筆:弁護士 池辺健太

1 増えていく企業の義務

労働施策総合推進法の改正(2020年6月)により、企業にパワーハラスメント対策が義務化されました。
また、公益通報者保護法の改正(2022年6月1日施行予定)により、事業者内部における公益通報に応じ、適切に対応する体制の整備が義務付けされました。

年々、企業の義務は増えていき、経営層や法務担当者にとって、要対応事項の数は右肩上がりだと憂鬱になることはないでしょうか。

コンプライアンスはもちろん大事なのですが、やること、やらなければならないこと、要対応分野、あなたの仕事、が日に日に増えていく(また、減ることはない)現状に、”コンプライアンス疲れ”といわれる状況におちいるのも、仕方がないように思えます。

そのような問題を解決する1つのノウハウとして、これらの義務のうち、「同時に解決できるものについては一挙に対応すべき」というものがあります。
そこで、公益通報者保護(の義務)とパワハラ防止措置(をとる義務)については、同時解決してはどうでしょうか、という例を示してみます。

2 公益通報者保護について

公益通報者保護法は2022年6月1日施行予定ですが、事業者がとるべき指針が2021年8月に公表されており、対応準備を進めることが可能となっています。

上記指針に基づいて義務の具体的内容を検討していくと、まず「通報受付窓口の設置」が必要です。
その上で、当該窓口について、幹部からの独立性を確保し、また、通報があった場合には必要な調査を実施し、通報者を保護するという制度づくりが必要です。これについては、窓口運用のためのマニュアル、社内規程等による対応や、従業員への窓口の周知、社内教育等にて対応していくことになります。

簡単にまとめるならば、通報先窓口を設置し、当該窓口の運用が確保できるような体制づくりと、そのためのドキュメント作成をしなければならないといえます。

3 パワハラ防止措置について

パワハラ防止措置といっても多々ありますが、厚生労働省の指針をもとに検討し、4つにまとめると次のとおりです。

 (1) パワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発
 (2) パワハラへの相談に対応できる体制の整備
 (3) 発生したパワハラへの迅速、適切な対応
 (4) その他の措置

詳細は本稿では省きますが、上記(2)の実現のために重要なことの1つは、相談窓口の設置です。

そして相談窓口においては、相談対応のためのマニュアルや、相談窓口を従業員へ周知することも必要になってきます。

4 共通して対応が必要なのは”通報先”の確保

公益通報者保護とパワハラ防止措置への対応について、具体的な作業に落とし込んでいくと、「通報先の確保及び適正運用」という必要タスクは、重複していることに気づくことができます。
公益通報とパワハラの通報先は、必ずしも2つに分ける必要はなく、法務部又は弁護士等への通報ラインを新設し、または、既にある通報ラインについて、各法律に適合するよう、運用を修正することで対応可能です。

このように、企業の義務について、法律の要求事項は抽象的ですが、これを具体的なタスクに落とし込めば、複数の義務に同時対応することも可能になります。
法務の負担減のためには、このような発想が必要になってきます。

5 通報先の確保又は運用改善について

以上のように、2つの法律による要求事項については、「法令の要求事項に従った通報先整備」と1つの作業としてまとめてしまうことが可能です。

また、上記のような通報先を設置するには、法務部等へのホットラインを準備する、または、当事務所も提供しておりますが、弁護士事務所による通報先受託サービスを利用する(一定の作業を外注してしまう)ことでも達成できます。

現時点で、従業員から法務への直通ラインがない企業、及びあるとしてもその周知や運用に疑問を抱えている企業は改善が必要ですし、また法改正の影響から、対応の優先度が上がってきているといえます。

当事務所では、通報窓口の外部委託にも対応しておりますし、運用面での助言及び支援のみでもご提供可能です。
パワハラ防止措置、公益通報者保護と、企業の責務が大きくなる中で、弁護士を上手に利用することもご検討ください。

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  • 本原稿は、過去に執筆した時点での法律や判例に基づいておりますので、その後法令や判例が変更されたものがあります。記事内容の現時点での法的正確性は保証されておりませんのでご注意ください。

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