コラム

COLUMN

交通事故~過失・過失割合における戦い~

一般企業法務等

2021.07.04

1 はじめに

 交通事故により、生命、身体、財産等が侵害された場合、被害者は、相手方に対し、生じた損害を賠償するよう求めることができます。ただし、その前提として、相手方には注意義務違反が認められなければなりません。例えば、信号無視や前方注視義務違反がそれに当たります。この注意義務違反のことを法律上“過失”と言います。

 また、必ずしも生じた損害の全額について賠償を受けることができるわけではありません。被害者にも過失がある場合、相手方の過失の大きさとの割合に応じて、損害賠償を受けることのできる金額が減額されることがあります。この割合のことを法律上“過失割合”と言います。

 交通事故が起きたとき、加害者の中には、自らの負う損害賠償の義務を免れようとして、“嘘”をつく人がいます。そのため、実務においては、「対面信号は赤色ではなく、青色であった。」、「出合い頭衝突ではなく、追突であった。」といった形で過失の有無や過失割合の大きさが争われることがあります。

 このような場合、弁護士はどのようにして過失の有無や過失割合の大きさについて争うのでしょうか。

2 依頼者からの“真実”の聴き取り

 まずは、“真実”を知っている依頼者の方から、交通事故の状況について詳しく話を聴き取ります。

 事故の発生日時、事故現場の道路の形状、明るさ、交通量、進行方向、速度、相手方車両の状況、衝突の態様、事故直後の現場の状況、事故直後の相手方の発言等について、依頼者の認識を伺うことになります。

 聴き取りを終えた後は、過去の裁判例等に基づき、当該交通事故で相手方の過失が認められるか、過失割合はどの程度になるかの見通しを示します。

3 客観的証拠の収集

 次に、交渉や裁判を有利に進めて行くために、客観的証拠を収集します。

 具体的には、警察署及び検察庁に弁護士会から照会をかけ、当該交通事故に関する刑事事件記録を取り寄せます。そのうち、依頼者又は相手方の立ち会いの下、警察官が事故の発生状況について調べた“実況見分調書”は重要な証拠です。実況見分調書には、現場の見取図が添付されていて、最初に相手を発見した地点、危険を感じた地点、ブレーキをかけた地点、衝突した地点、停止した地点等が記録され、各地点間の距離等も記録されています。

 この実況見分調書には事故直後の車両や現場の状況について写真が添付されていることもありますが、そうでない場合には、車両を修理する際に撮影された写真を修理業者から取得したり、現地に赴いて写真を撮影したりします。

 収集した客観的証拠を見ると、依頼者の話す内容がやはり真実であり、相手方の主張に矛盾があることが分かってきます。

4 鑑定書の作成依頼

 客観的証拠が揃った後、専門家に対し、客観的証拠に基づく鑑定を依頼することもあります。

 専門家は、物理的な計算やコンピューターグラフィックス等を駆使して、当該交通事故の状況を再現します。もっとも、鑑定は、あくまで収集された証拠に基づく専門家の判断であるため、真実通りに作成される保証はありません。

 そのため、弁護士は専門家と綿密に打合せをして、証拠を正確に引継ぎ、真実と異なる鑑定書が作成されないよう留意する必要があります。

 尋問

 仮に、交渉段階では示談をすることができず、裁判に至った場合、被害者や加害者との尋問が行われることがあります。

 その際には、依頼者に真実を語っていただいた上、収集した客観的証拠や作成した鑑定書を示して相手方の主張の矛盾点を徹底的に追及していきます。

6 終わりに

 過失の有無や過失割合の大きさは、損害賠償を受けることができる金額の有無・多寡に関わる重要な点である上、専門的な知識が必要不可欠です。

 交通事故に遭われた際に、相手方から理不尽な嘘をつかれたら、真実を明らかにし、適正な損害賠償を受けるためにも、是非当事務所までご相談ください。

(2014年7月執筆)

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