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コラム

COLUMN

中国で小売事業を営む企業の注意点
~上海高島屋で販売された商品の不正価格操作に対して行政処罰が与えられた事案~

国際ビジネス

2022.04.05

執筆者:フォーリンアトーニー 馬駿

【事実経緯】

2022年3月24日、市民の通報により、上海市市場監督管理局(以下、「当局」といいます。)は、価格不正操作の疑いで上海高島屋百貨店(以下、「上海高島屋」といいます。)に立入検査を行いました。

3月26日午後、当局は、下記の調査内容をWeChatの公式サイトで公表しました。

上海市市場監督管理局の公式サイトより

当局の調査によれば、2020年9月以降、汪何某(以下、「汪氏」といいます。)は、上海農康野菜専門組合(中国語では、「上海农康蔬菜专业合作社」)の名義で上海高島屋と共同販売契約を締結し、上海高島屋が運営する「Mercato Fresco鲜市集」内で「徐泾农康」コーナーを設置し野菜などを販売していました。

上海市市場監督管理局の公式サイトより

ところが、当該野菜は、実際には汪氏が市場や生鮮食品店などから仕入れたものであるにもかかわらず、選別・包装した後、「車で25分の身近な大型農場」、「☆地産地消☆家庭農場☆収穫体験☆養殖イベント☆宅配サービス」、「農康自産直売野菜」の宣伝文言で宣伝していました。さらに野菜等の一部の商品の外装ラベルで【徐泾农康】の商標[1]を使用し、高級食品として高値で一般販売していました。これに対して、上海高島屋は上記の内容を充分に精査確認していませんでした。


[1] 中国の国家知的財産商標局公式サイトの検索結果によれば、当該商標は無効とされています。なお、現時点までの公表情報を見る限り、当局は、今回、上海高島屋に対して最高額の罰金を科したことと、当該無効商標の関連については明言されていません。

また、上海高島屋は、2022年2月14日より、同店が経営する「Mercato Fresco新鲜市集」で、フィリッポベリオエクストラバージンオリーブオイル、小川稲庭手打ち素麺、North Shore F冷凍ロブスター風味かまぼこ、堀江稲庭手打ちうどん等8種類の商品の販売活動を相次いで行っていましたが、値札に表記されていた「元値」はすべて虚偽のものだったことが判明しました。

上記の上海高島屋と汪氏のそれぞれの関連行為が「中華人民共和国価格法」の関連規定に違反し、価格詐欺による違法行為を行ったとして、当局は、関連法律規定に基づき、行政処罰公聴通知書[2]を出し、汪氏に対して罰金最上限額の10万元、上海高島屋に対して罰金最上限額の50万元の処罰をそれぞれ科しました。


[2] 行政処罰の結果を通知するとともに、処罰された当事者へ弁明書の提出及び公聴会の実施を要求する権利を有する旨を告知する通知。

【上海高島屋の対応措置】

  また、当局の行政処罰を受けた当日の夜、上海高島屋は,上海市消費者保護委員会に対し、「今後、価格管理を確実に強化し、政府関連部門と積極的に協力し供給保障及び物価安定が可能になるよう、企業責任と企業の社会的責任を全面的に履行する」と表明し、上海市消費者保護委員会に対し5つの約束をしました[3]

  1、鲜市集内の本案関連商品の価格ラベルを直ちに是正すること

  2、新鲜市集内の商品を全面的に自己調査すること

  3、本件と類似する問題の再発を防ぐため、上海高島屋が内部業務プロセスの検証作業を既に開始し、コンプライアンスの強化に努めること。

  4、中華人民共和国価格法及びその他の法令を厳格に遵守し、売場内の価格ラベルを厳しく審査し、表示価格の真実性と有効性を確保のうえ、消費者の合法的権益を保護すること

    5、上海高島屋は、すでに関係部門と密接な連携をとり、消費者対応等の後続的な処理を着実に進めており、消費者の合理的な要求に適切に対応すること。

そして、最後に上海高島屋は、上海市消費者保護委員会を通じて消費者に対して謝罪の意を表明しました。


[3] 上海市消費者権益保護委員会https://mp.weixin.qq.com/s/4QHtutdWJMfWfgtmMzWknA)。

【中国で小売事業を営む企業の留意点】

  商品価格の設定または表示等について、中国では、価格法、価格詐欺行為禁止規定、価格違法行為行政処罰規定等の法令があります。

 コロナ禍の影響もあり、当局は、社会的な混乱を防ぐため、商品価格の設定と表示等に係る違法行為について厳しく取り締まっています[4]。このような背景もあり、中国で小売事業を営む企業としては、販売商品、提供サービスの価格設定または表示について法的に問題がないかを常に検証し、会社のコンプライアンスを強化のうえ、法的リスクの回避に努める必要性が高いといえます。

 また、本件の場合、価格表示以外に問題視された点は、上海高島屋が商品偽装を発見できなかったことです。本件の教訓として、事業者は、内部統制メカニズムを完備させる必要があり、商品の価格設定と広告宣伝等の客観的真実性を保証すると同時に、その商品自体が本物であるかどうかを慎重に検証・確認しなければならないといえます。そのうえで、関連法令及び市場監督管理部門の指示に従い、商品価格の設定と表示及び宣伝資料の作成を進める必要があります。また、違法行為が見つかった場合には、社会的な影響をできる限り最小限にするために、本件の上海高島屋の対応のように、速やかにその違法行為を是正すべきです。


[4] 上海市政府WeChat公式サイト(https://mp.weixin.qq.com/s/koAqQDXdsCG4R-NA2SmtEg

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