執筆者:弁護士 池辺健太
サブリース規制と重説の様式
令和2年(2020年)12月より、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律が一部施行され、サブリース事業について新たに規制が及ぶことになりました。
具体的にはマスターリース契約において、オーナーに対して重要事項説明をする必要があります。重要事項説明書のひな形(PDF及びWord版)が国交省ウェブサイトにアップロードされており、こちらをそのまま活用することが可能です(下記URLにおいてガイドラインも公開されており、ガイドラインには、重要事項説明書の記載例もあります。)。
重要事項説明書の記載例等の解説
国交省の発表した重要事項説明書の記載例等では、まず1枚目に書面の内容を十分に読むべき旨が、太枠・太字波下線で示されています。
さらに冒頭では、借地借家法第32条、借地借家法第28条の適用を含めた、マスターリース契約を締結する上でのリスク事項が記載されています。
●借地借家法第32条(借賃増減請求権)
サブリース業者側から借賃減額請求等があり得ること等の説明が必要です。
●借地借家法第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
借地借家法の適用により、マスターリース契約の解除が容易ではないこと等について説明が必要です。
また、重要事項説明書の様式に沿って重要事項説明書を作成するにあたっては、国交省のガイドラインに「日本産業規格Z8305に規定する8ポイント以上の大きさの文字及び数字を用いること」と記載があり、これを満たす文字サイズとすることが推奨されています。
重要事項説明にあたっての注意点
サブリース契約のオーナーが遠隔地に居住している場合も多いかと思われますが、この重要事項の説明については、テレビ会議等のITを用いて実施することも認められています。
ITによる重要事項説明を実施する場合、原則として重要事項説明書は事前送付しなければならない等、一定の要件がありますので、確認の上、社内周知、マニュアル化等の対応が必要と思われます。
他に重要事項説明にあたって、ガイドラインに気になる記述が1つ。それは「重要事項の説明のタイミング」です。ガイドラインには、「重要事項の説明から契約締結までに1週間程度の十分な期間をおくことが望ましい。」と記載があり、つまり契約締結日より1週間程度以前に説明するとの目標が定められています。
あくまで「望ましい」という記載ではありますが、不動産事業者にとっては、サブリース事業において新たに重要事項説明が義務化されたというだけで業務としては負担であるのに、それを契約締結日から1週間前に行うというのは、ちょっと悩ましい要求ではないかなと思います。契約締結時のオペレーションを大きく変更する必要が生じ、負担が大きすぎる、という事業者も多いのではないでしょうか。
この点に関して、ガイドラインでは、重要事項説明書を事前送付する等して、オーナーとなろうとする者が契約締結判断を行うまでに十分な時間をとる、という方法も提案されているところです。
契約手続における実際のオペレーションとのバランスを考えつつ、重要事項説明のタイミングについて、検討していく必要があるかと思われます。
(2021年7月執筆)
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