2019年6月28日、経済産業省は、グループ設計や内部統制システムの在り方について、ベストプラクティスを示すガイドラインとして、「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」を公表しました。
≪グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)≫
https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190628003/20190628003_01.pdf
≪エグゼクティブ・サマリー≫
https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190628003/20190628003_02.pdf
もちろん、グループ経営の在り方は多様であることから、本指針に記載されている取組みが一律に要請されているわけではありませんが、本指針に沿った対応を行った場合には、通常、取締役の善管注意義務を尽くしていると評価されるといわれています。本指針は約140頁に及ぶものですが、その主要な項目のうち、【グループ設計の在り方】、【事業ポートフォリオマネジメントの在り方】、【内部統制システムの在り方】、【子会社経営陣の指名・報酬の在り方】について、簡単にご紹介します。
【グループ設計の在り方】
グループ企業では、意思決定の迅速化と間接部門のコスト削減を重視して本社機能を縮減した結果、子会社に対する監督・管理が不十分となり、不正の発生や対応の遅れを招くことがあります。
本指針では、グループ本社の役割や子会社管理の在り方に関して、親子間の意思決定権限の配分に関するルールを定めることなど、グループ全体の枠組み整備に関する主要な考え方を示しています。グループ全体における分権化(事業部門への権限委譲)と集権化(本社によるコントロール)のバランスにお悩みの企業にとって、参照すべき価値があると思われます。
【事業ポートフォリオマネジメントの在り方】
複数の事業を営むグループ企業では、コア事業の増強や次世代の成長事業の育成、不振事業の撤退など、経営資源の最適化が重要な課題であり、これを疎かにすると、負債部門における役員・従業員へのプレッシャーが不正の原因になるなど、コンプライアンスリスクにも繋がります。
本指針では、グループ本社の取締役会が、各事業部門の評価に関する客観的な指標の導入や、業務の執行者から距離を置く社外取締役の主体的な関与などを提唱しています。複数の事業に対する経営資源の投下方法に関してお悩みの企業にとっては、取締役会における議論を活発化させるための指針が示されています。
【内部統制システムの在り方】
子会社における不祥事等は第一次的に子会社の取締役等の責任であり、親会社の取締役等の責任は、原則として子会社管理について通常期待される注意義務を尽くしていたかという観点から評価されます。また、子会社において有事が発生した際の親会社の主な役割は、子会社による対応状況のモニタリング、当該子会社の経営陣の責任追及や再発防止策の監督です。
このような観点からは、グループ会社間における事業部門、管理部門及び内部監査部門等の連携と独立性確保に向けた仕組みが重要となり、管理部門等の人材育成や専門性の向上も求められます。グループ全体における管理体制の構築や有事対応の整備を行う際には参考になると考えられます。
【子会社経営陣の指名・報酬の在り方】
グループ企業では、本社がグループ統一的な人事・報酬政策を明確に示した上で、その共通の枠組みの中で、各子会社の実情に応じた最適な人事管理や報酬制度の設計を行うことが重要です。そのため、グループ親会社の取締役会では、主要な完全子会社の経営トップの指名や後継者計画、報酬について審議対象とすること等が必要になります。
この点に関して、本指針では、グループ全体として一定レベル以上のポストを対象にしてジョブグレード制を採用することなどを提唱しています。グループ全体としての後継者育成、人事管理の在り方等にお悩みの企業にとっては、本指針を参照すべき価値があると考えられます。
当事務所では、国内外の子会社も含めたグループ全体のコンプライアンス体制構築や運用、社外相談窓口の設置運用支援といった業務にも積極的に取り組んでおります。ご質問がありましたら、いつでもご相談ください。
(2020年1月 弁護士 森進吾)
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