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コラム

COLUMN

「色」や「音」の商標登録

知的財産

2021.07.15

1 商標法の改正

 みなさん「色」や「音」の商標ってご存じですか。

 現行の商標法では、商標は「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」でないと登録できません。簡単に言えば、文字、図形、記号、立体的形状やこれらに色を付けたものでなければ商標登録できないのです。そのため、例えば、ある色彩がA社という企業のイメージカラーとして長年使用されて広く定着した場合や、ある効果音がB社のCMで繰り返し使われてきた結果、その効果音が流れればB社の商品を連想させるようになった場合であっても、これを商標として登録することはできなかったのです。

 しかし、諸外国では、すでに色彩や音を商標として保護しており、日本の現行制度は、このような世界的な潮流から取り残されているといった指摘を受けていました。このような事情を背景に、約10年間にわたる検討を経て、産業構造審議会・商標制度小委員会が取りまとめた「新しいタイプの商標の保護等のための商標制度の在り方について」という報告書を踏まえ、2014年4月25日、音や色などの商標登録を可能とする改正商標法が成立しました(今年の5月14日までに施行される予定です。)。改正法では、「商標」が下記のように定義され、図形等と組み合わされたものではなく、色彩のみからなる商標と音の商標が追加されたことが分かります。


【第2条】

 この法律で「商標」とは、人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であって、次に掲げるものをいう。

一・二(略)


2 海外での具体例

 「色」や「音」が商標になると言われても具体的なイメージがわかないかもしれませんので、審議会で検討にあがっていた海外での登録例を取り上げてみましょう。

 まず、「色」についてみると、文具メーカーのトンボ鉛筆は、アメリカで、青・白・黒のトリコロールの色彩商標の登録(米国商標登録第3252941号)を受けています。この色彩を見ると、お馴染みの「MONO」の消しゴムのパッケージが連想されますよね。

 次に、「音」ですが、例えば、米国では、“The mark consists of a five tone audio progression of the notes D FLAT, D FLAT, G, D FLAT and A FLAT.”つまり「レ♭-レ♭-ソ-レ♭-ラ♭」からなる音列が商標登録(米国商標登録第2315261号)されています。誰が登録しているものか分かりますでしょうか。これはアメリカの半導体メーカーのインテルが商標登録しているものです。頭の中にCMで聞いたことがあるメロディが思い浮かんだのではないかと思います。

 また、メロディのみの登録だけでなく、歌詞付きで登録することも可能です。久光製薬は、アメリカやヨーロッパで、CMの最後に流している「ヒサミツ♪」というメロディを、「HI SA MI TSU」という歌詞付きで商標登録(欧州共同体商標登録第2529618号)しています。

 これで「色」や「音」の商標の具体的なイメージがつかめたのではないでしょうか。

3 どのような商標が登録できる?

 では、改正商標法では、どのような色や音の商標が登録できるようになるのでしょうか。産業構造審議会・知的財産分科会商標制度小委員会商標審査基準ワーキンググループが出している審査基準(案)では以下のような意見が出されています。

 まず、「色」の商標について、色彩のみからなる商標は、単一の色彩でも色彩を組み合わせた商標でも、本来的に識別力は認められないが、使用により識別力を獲得することによって、需要者が商品又は役務の出所を認識することができるようになったものについてのみ、その登録を認めるべきとの意見が出されております。先のトンボ鉛筆の「青・白・黒のトリコロールの色彩」のように、長年にわたりそのデザインが使用され、その色彩が特定の商品を連想させるようになれば、色彩の商標登録が認められるということになりそうです。

 次に、「音」の商標について、音商標の識別力に関し、音が言語的要素を含む場合(例えば、メロディにのせて製品名・企業名等を読み上げる場合)、当該言語的要素が例えば企業名等を表すものとして出所を認識させる場合には、原則として、音商標に識別力があるといえるとされています。例えば、先の久光製薬の「ヒサミツ♪」というメロディのように、メロディにのせて製品名・企業名等を読み上げる音であれば商標登録が可能ということになりそうです。

 他方、①商品又は役務の特徴としての音(例えば、炭酸飲料の「シュワシュワ」という泡のはじける音、スプレー缶の「シュー」というスプレー音)、②極めて簡単で、かつ、ありふれた音(例えば、単音やこれ準じた単純な音)、③その他自他商品役務の識別力が認められない音(例えば、「石焼き芋の売り声」、「夜泣きそばのチャルメラの音」、「ゴロゴロゴロ(雷の鳴る音)」、「ピコピコ(電子音)」)などは、識別力が認められない音という意見が出されており、このような音を商標登録することは難しいということになりそうです。

4 終わりに

 改正商標法では、「色」や「音」や以外にも、「動き」「ホログラム」「位置」といった新しいタイプの商標が改正商標法により保護されることになるため、これまで以上に、様々なバリエーションの商標登録が増えていくことが予想されます。

 みなさんも今までにない新しい商標を検討されてみてはいかがでしょうか。

(2015年1月執筆)

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