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コラム

COLUMN

中国独占禁止法改正による影響

国際ビジネス

2023.03.28

執筆者:森進吾・吉田幸祐

 2008 年に施行された中国独占禁止法は、2022 年に初めて改正されました。本改正のポイントは多岐にわたりますが、以下では、日系企業への影響が特に大きいと思われる、①垂直協定における「セーフハーバー」ルール等の導入、②課徴金上限の引き上げ、③事業者結合規制の3 つのトピックについて、改正法の概要をご紹介します。

①垂直協定におけるセーフハーバー・適用除外の追加

 これまで、事業者が中国の販売代理店などの取引先に対して販売した商品の再販売価格を固定したり最低価格を指定したりする行為は、中国の関連市場におけるシェアの多寡にかかわらず、「垂直的独占協定」として一律に禁止されていました。この点、本改正では、中国の関連市場におけるシェアが一定の基準を下回る場合には、これらの行為が禁止されないという「セーフハーバー(安全港)」ルールが設けられました。セーフハーバーとなる市場シェア率は現時点(2022 年11 月1 日時点)では確定していないものの、15%が一つの基準になると考えられています。

 更に、仮にセーフハーバーとなる市場シェア率を超えていたとしても、事業者が再販売価格の固定や最低価格の指定をする行為が競争を排除し又は制限する効果がないことを証明することができれば、当該垂直協定は禁止されないことも明記されました。

 これらの改正により、メーカーである日本企業又は日系中国企業が中国の販売代理店などと取引を行う際に中国市場における再販売価格を固定したり最低価格を指定したりする行為について、法的リスクの予見可能性が高まったといえます。

 他方で、セーフハーバーへの該当性や競争排除的効果がないことなどの証明は事業者が行うこととされているため、中国における関連市場の画定や市場占有率の判断が、今後より重要性を持つこととなります。

②課徴金上限の引き上げ

 改正法では、全般的に課徴金の上限が引き上げられています。

 例えば、中国の関連市場において一定の市場シェアを有する事業者同士が合併したり合弁企業を設立したりする場合(このような行為を「事業者結合」といいます)、事前の届出が必要になる場合がありますが、この単純な届出義務に違反した場合であっても、500万人民元(約1億円)以下の課徴金や、前年度の売上高の10%以下の課徴金が課されるおそれがあります。また、この場合には、事業者結合を行った事業者の法定代表者、主要責任者及び直接責任者も課徴金の対象に加えられました。

③事業者結合規制

 上記の届出基準に満たない結合行為についても、中国の行政機関が、ある事業者結合が中国の関連市場における競争を排除・制限する効果を有し、又はその可能性があると考える場合には、自ら調査できることが明記されました。

 また、行政機関による事業者結合にかかる審査の期間について、審査期間の一時停止を許容する規定が設けられたことにより、審査期間が事実上伸長するおそれがあります。

 上記の②③からすれば、中国の関連市場において一定の市場シェアを有する企業がM&A を行う場合には、スキーム検討やスケジュールの策定段階から、中国独占禁止法上のリスクや審査期間との関係性を慎重に検討する必要性が増したといえます。

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